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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな60 

やんぬるかな60  工藤泰子
 「やんぬるかな」が60回になる。「遥照」は毎月発行なので、五年間休まず書いてきたことになる。最初に書いた「やんぬるかな1」は、こんな調子の“笑える力作”だった。少し振り返ってみよう・・。
「はひふへほー!」これはいったい何?子供に人気の漫画に出てくるのだが、何故「なにぬねの」ではないのかな。・・・答はやなせたかしさんの漫画「それ行けアンパンマン」のバイキンマンが登場するときの雄叫びだからだ。退散する時には「バイバイキン!」となる。人気の悪役キャラのバイキンマンは黴菌を撒き散らす「ハエ」だからハ行で・・。とこんな調子!
しかし、真面目に「いろは歌」も紹介している。
“色は匂へど 散りぬるを 我が世誰そ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず“
作者は、空海とも柿本人麻呂とも言われているが、47文字使い切って見事だ。47というと、おニャン子クラブ47名/赤穂浪士47士/AKB48は?一人多いのが狙いか?・・この号の文章は、漢字の【己んぬる哉。これからも日本語と俳句の間をうろつくつもりだ】で終わった。
 「やんぬるかな2」では、上から読んでも下から読んでも同じ=回文を紹介した。
虫置きし土間のその窓子規惜しむ  井口吾郎
   ポポンタポポンタタンポポタンポポ  〃
回文の傑作に「宝船」がある。初夢を見るとき枕の下に敷く縁起を担ぐもので、宝船(帆掛け船・七福神・米俵・宝貨)の絵が描いてあり、聖徳太子の作と言われている歌(回文)が添えられている。長寿、なみのり(実り)舟(不音)などの掛け言葉もあり高度な技術が駆使されている。
長き夜の遠の眠りの皆目覚め
波乗り舟の音のよきかな
ながきよのとおのねむりのみなめざめ
なみのりふねのおとのよきかな
 この様な言葉遊びも楽しいが、俳句を作るには、「季語」の力と魅力を理解する必要がある。
昨年一月、茨木和生著「季語を生きる」(邑書林出版)が出版された。第十一回俳人協会評論賞を受賞した「西の季語物語」(1997年)、「季語の現場」に続き“俳句の本質に迫る現場の声!”が届く本だ。まるで「社会学」「文化人類学」などのフィールドワークの様な行動力の先生は、環境問題にも向けられ、「吉野の桜」・「那智の滝」を守る会を推進されている。
出版にあたり、編集長の島田牙城(和生先生の高槻高校の教え子)が、「『続・季語の現場』という題ではいけません。『季語と生きる』では弱い。『季語を生きる』としたらどうですか?」と提案してくれたので、「・・いいねえ!」とこれに決まった経緯が、あとがきにある。
さて著書「季語を生きる」の「新年の季語」から、珍しい季語のいくつかを見てみよう。
【私(茨木和生)が詠んでいる新年の季語は七十ちかくあるが、生活様式がどんどんと変わってゆき、少年時代に体験していた行事や慣わしなどもずいぶんとなくなってきている。季語の「蓬莱」もその一例である。公団住宅やマンションに暮らしていたころ、「蓬莱」という季語で作句することなどはなかった。せいぜいが三方(さんぼう)に羊歯(しだ)を敷いて鏡餅を据え、昆布、串柿、橙を置く餅飾りをする程度だった。季語のある暮らしをしてみたいと思っても、時間的な経済的な余裕がなかった時代だったからである。
定年になって、時間の拘束から解放され、松の内の間に漁村や山村の民宿に泊まって吟行する機会に恵まれるようになった。正月の漁村に行けば、その集落の祭礼の神事宿である頭屋(とうや)の家を訪ねて、みごとな蓬莱飾りを見せてもらったりした。
   蓬莱の栄螺の吐きし潮かな  和生〃
   蓬莱の鮑の痩せを嘆きけり  〃】
 忘れられそうな古季語を甦らせる活動もしている先生だからこそ、出会える季語の現場!だ。次に
【正月ならではの季語「初詣」は神社や寺に出かけないと佳句を得ることはできない。しかし、表面だけ見ていると、類想、類似の句になってしまうのも「初詣」の句である。初詣に出かけていってそこで出会う「季語」を歳時記であらかじめ調べておき、その季語の現場に立ち会って句を作ることが大事である。・・中略・・私が季語「宝船」に関心を持ったのは、下賀茂神社や錦天満宮で実際に宝船を買い、それを枕に敷いて寝たという体験をしてからである。
  泥描きをしたる日輪宝船   茨木和生
  青々の直筆といふ宝船      〃  】
 今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」は、「神ってる」だった。言葉を発したのは、広島カープの緒方監督だが、受賞したのは25年ぶりのリーグ優勝の「神がかっている!」シーンの立役者、鈴木誠也選手である。「神ってる!」とは、若者言葉なのだが、これで、完全に市民権を得ることとなった。スタジアムを埋め尽くしたファンの祈りが言霊となって天?に通じた結果だろう。神った鈴木の年棒は三倍増になったそうだ。
一方、サッカーのファジアーノは残念な結果に終わった。ボールがゴールを揺らすか掠るか?ピンポイントの神の計らい?今年の活躍を期待しょう。
 もともと日本人は慎み深いところが美徳であった。他人に向かって、あからさまに非難する「言挙げ」「言向け」はしない。なぜなら、言葉には呪力があり、声に出して言い立てると、他人を本当に傷つけることになると恐れていたからだ。万葉集の柿本人麻呂の歌に
「葦原(あしはら)の瑞穂(みづほ)の国は神(かむ) ながら言挙げせぬ国」がある。
その悪しき例として、「ヤマトタケルが伊吹山の神の出現に対して退治に出向いた時、 突然現れた白猪(実は神)を神の使いだと見誤り、素手でやっつけてやろうと「言挙げ」をした為、神の怒りに触れ、病に罹り命を落とす結果になった。」がある。
 
お正月には特に縁起のいい言葉が喜ばれる。子供時代の記憶に「おしし」がある。悪魔祓い、飢饉や疫病を追い払う獅子舞のことだ。ぎらぎら光る金歯を開けて、ガブリと噛むので、逃げ回ったが、「噛みつくと神が付く」縁起かつぎとは知らなかった。
獅子舞の来て村ぢゆうが動きだす  鷹羽狩行
舞ふ獅子の口にくはへし新紙幣   白神知恵子
獅子頭はづし携帯電話受く     馬場公江
  コイン切れ仕掛け獅子舞そつぽ向く 久松久子
 久松久子さんの句は、句集「笑って五七五」(滑稽俳句協会叢書)の句である。コインで動く獅子舞は「金」の切れ目が「運」の切れ目かと笑ってしまった。
 軽くも重くも軽みも深みも俳句はさまざま。
今年も目出度く始めたい。
  寝返りにゆらぐ敷き寝の宝船   内藤吐詩朗
  神官のこゑの歯切れや淑気満つ    〃 
 遥照の元会員、内藤さんの届いたばかりの句集から選んだ。次回には、その句集「風の友」にどんな風が吹いているか鑑賞したいと思う。
             やんぬるかな!

Posted on 2017/01/04 Wed. 11:34 [edit]

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04

やんぬるかな59 

やんぬるかな59  
をりとりてはらりとおもきすすきかな 飯田蛇笏
蟷螂のよろりと枯れを尽しけり  石津淡紅

前回は、“この「はらり」「よろり」この俳句のよろしさを味わうのに、秋は良い季節だ!”で終わった。さてこの「はらり」と「よろり」の様な副詞は経験的に理解しているが、実際には、視角、聴覚、触覚どの感覚で感じる取るのだろうか。
副詞の「はらり」を辞書で調べると例文に
「花びらがはらりと散る」
「髪がはらりと解ける」などがある。
それに「と」を伴う「はらりと」は擬態語になる。
ハ行なら「はらり」「ひらり」「ふらり」「ほろり」・・・
ヤ行なら「ゆるり」「よろり」などが思いつくが、これら物事の状態や様子などを感覚的に音声化して表現するのをフランス語では、「オノマトペ」と言う。「オノマトペ」は「擬音語・擬声語・擬態語」を包括したものだ。その数は文化圏の拡がりに伴ってどんどん増殖する一方だ。思いつくまま並べても、「あらあら」「いろいろ」「うろうろ」「おろおろ」「からから」「きらきら」「くらくら」「じわじわ」「ばらばら」「ほろほろ」「よろよろ」と無限だ。
日本人の心に沁みる演歌を解剖してみよう。八代亜紀の「舟歌」(阿久悠作詞)が歌いやすく、耳に残るのは、歌唱力と曲もさることながら、オノマトペのリフレインが、心地よく酔わせてくれるからだ。「しみじみ飲めばしみじみと」「ほろほろ飲めばほろほろと」・・「歌い出すのさ舟歌を~~」
さて恒例の流行語大賞の時期が来た。その年に流行った言葉、ギャグ、人物、新造語などから、大賞候補作品がノミネートされた。12月1日の発表前の下馬評はいかがだろう。個人的に気になるものを挙げよう。
●マイナンバー
●ゲス不倫・センテンススプリング;ベッキーとゲスの不倫を暴露した週刊文春の「文」=センテンス(sentence)、「春」=スプリング(spring)が由来。
●『G7(先進国首脳会議)』伊勢志摩サミット
●東京五輪エンブレム「組市松紋」野老朝雄
●笑点五十周年・(司会は桂歌丸→春風亭昇太)
●EU離脱
●日米通算三千本安打記録(イチロー)
●SEKOI(せこい)マスゾエする・第三者機関
●十八歳選挙権
●安倍マリオ
●ポケモンGO
●SMAP解散
●映画「シン・ゴジラ」
●アニメ「君の名は」興行収入百億円を突破。
●築地市場移転問題・盛り土
●神ってる;広島カープが25年ぶりのリーグ優勝
●コミック「こち亀」終了。40年連載最長記録
●『PERFECT HUMAN』お笑い芸人のオリエンタルラジオのダンスパフォーマンス。
●「ペンパイナッポーアッポーペン」謎のシンガーソングライター・ピコ太郎の楽曲。
●都民ファースト●アスリートファースト●レガシー
●トランプ旋風  
 
正式名「ユーキャン新語・流行語大賞」(自由国民社)は今年で33回目となる。もっとも世間に影響を与えたと思われるフレーズが表彰されるが、オリンピック関連、東京都庁問題、アメリカ大統領選挙などメジロ押しだ。
 因みに、2015年の大賞は「爆買い」・「トリプルスリー」だった。その他「一億総活躍社会」「五郎丸(ポーズ)」「ドローン」などがあった。
余談だが、十一月十三日の岡山市民マラソンに「そんなの関係ねぇ(2007年のトップテン)」の小島よしお(タレント)が参加していた。ゴール直前の一番しんどい時に、テレビカメラにそのギャグを披露し、芸人根性を見せていた。
さて江戸時代にも「キレキレ」のオノマトペの句がある。芭門十哲の一人、内藤丈草(じょうそう)は江戸前期の俳人だ。「ほこほこ」の使い方は、湯気が出そうな暖かい感じ!江戸中期の俳人高桑闌更(らんこう)の「ひらひら」の月光と翅(つばさ)の描写は前衛的で新しい感覚だ。
ほこほこと朝日さしこむ炬燵かな   丈草
月ひらひら落来る雁の翅かな      闌更
他にも、目から鱗の感覚の俳句!
ひうひうと風は空ゆく冬ばたん   上島鬼貫
とつぷりと後ろ暮れゐし焚火かな 松本たかし
妻が留守の障子ぽつとり暮れたり  尾崎放哉
冬の日のくわつと明るき一と間かな 村上鬼城
しんしんと寒さがたのし歩みゆく  星野立子

 いよいよカレンダーは残りの一枚になった。テレビのマスコミの過熱にはうんざりと言う人には、冬籠りの句を参考にしてもらいたい。
今、「生来の芸術上の貴公子」と評された松本たかしの句に惹かれている。能楽の名家に生まれるが、病の為に能を断念した彼の世界観、無常観がたまらない。
夢に舞ふ能美しや冬籠      松本たかし
人間の海鼠となりて冬籠る     寺田寅彦
冬ごもり世間の音を聞いて居る   正岡子規
 
現実の地球では、ポーカーではないが、ストレートフラッシュ?でトランプ候補が勝利した。韓国では百万人規模で朴政権に抗議のデモが行われている。海の向うと言ってはおれない状況だ。
へろへろとワンタンすするクリスマス 秋元不死男
木枯に星の布石はぴしぴしと   上田五千石

へろへろ」のあとは「ぴしぴし」も良い。
ここ、天文台の町の夜空には、どの様な布陣が敷かれるだろうか?
カフカ去れ一茶は来たれおでん酒 加藤楸邨
おでん酒なら理屈は要らない。        やんぬるかな!

Posted on 2016/11/21 Mon. 21:31 [edit]

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21

やんぬるかな58 

やんぬるかな58  工藤泰子

 

前回は発見のカタマリの子供俳句を紹介した。

  ①「さくらの木秋になったらふつうの木」

  ②「はっばはねおちているけどいきている」

  ③「太い木にまたあたらしいえだがつく」

  ④「あきにはねいろんないのちのなきごえが」

  ⑤「秋になりひとがやさしくなってくる」

今年度の「第十一回浅口市俳句大会」の小中学生の作品も負けてはいない。私が気に入った小学生の句は、次の二つである。

A「かき氷口いっぱいの北極だ」

B「みんみんと静かな森が鳴いている」

Aでは、【北極という言葉がキーンと効いたね。口いっぱいで、なにも言えねえ!」と子供ぽくコメントした。】    

 Bでは【みんみんは蝉のこと、静かな森は鳴かないのだ!みんみんが鳴いて森が騒がしくなったというべきなのだ。メルヘンとしても読めなくもないが、「みんみんが静かな森に鳴きだした」「みんみんが聞こえる森の静けさに」などと実験してみた。大人は理屈をつけすぎるかな。】などと書いた。

しかし、後から子供の“自由な発想”を台無しにしたと後悔した。この下五の「森が鳴いている!」というアイディアは④の句の様にも読める。みんみんに誘われて森が(森の生き物や森の精まで)鳴いている!ではなかっただろうか?

さて、テレビの「プレバト」人気で、俳句がより身近になった。タレントの仰天発想に愕き、いつき先生の劇的添削に、「やってみよう!」と思うものの、いざ実作となると、敷居が高いのが実情だ。「分かるわかるわ~」と、心を捉えた感動の一句や俳人(本・テレビでも)に出会えれば、チャンス到来だ。そして、次には“乾いた心に届く俳句”に出会いたい。

蛇笏賞(だこつしょう)は、俳人・飯田蛇笏に因んで設けられた俳句の賞。前年一月から十二月に刊行された句集の中で最も優れたものに与えられる。俳句界では最も権威ある賞とされている。第五〇回(二〇一六年)は矢島渚男「冬青集」が選ばれた。最終候補作は、石牟礼道子「泣きなが原」、茨木和生「真鳥」、坪内稔典「ヤツとオレ」だった。主催は角川文化振興財団。

最初の選考委員は角川源義、最新は、宇多喜代子・片山由美子・斎藤愼薾・長谷川櫂だった。

飯田蛇笏」の秋の句を鑑賞してみよう。

芋の露連山影を正しうす

死病得て爪うつくしき火桶かな

たましひのたとへば秋のほたるかな

なきがらや秋風かよふ鼻の穴

くろがねの秋の風鈴鳴りにけり

誰彼もあらず一天自尊の秋

註(1885~1962)高浜虚子に師事、「ホトトギス」派の重鎮。強烈な主観で甲斐の自然と生活をとらえた端厳荘重な調べで知られる。飯田龍太は四男) 

              

をりとりてはらりとおもきすすきかな

今の季節の薄の句である。人気のこの句はたくさんの人が鑑賞している。「増殖する俳句歳時記」の解説で清水哲男さんの提言は愉快だ。「芒を手で折るなんて?千切らなければ無理!」と手厳しい。私も試してみたが、やはり手折るのは、無理だった。しかし銀色に揺れる薄が枯れて種が飛ぶようになれば重さなど感じないほど軽く、容易に手折れるのだ。手の中で「はらりと」向きを変えた瞬間、意外にもそれの重さを感じた。揶揄した深読みは好きではないが、 社会に無用な「枯れすすき」のような人(我)でも、一見何の重さ(価値)のない枯れたすすきの穂も確かな存在感を持っている!と言っている様にも思える。仮名書きにより、軽さ=儚さが際立った。存在感を感じさせる「はらり」の解釈は深い・・。

「遥照」では、二年毎に合同句集を編んでいる。三十三号は300号記念に出版され、誇らしい金字塔となった。私が参加する前の2003年(平成一五年)「鴨方俳壇・年間合同句集」が手元にある。佐藤宗生先生を始め、今も活躍中の人々の名前を見る事が出来る。

甲斐梶朗・川崎照女・土屋鋭喜・花房柊林・原房枝・古川澄子・牧明子・光岡早苗・森脇八重さん・・・。

故、太田蘆青、西山防流先生方にはお目にかかったこともあり、俳句を通じて人となりを思い出すことができた。

県大会で大活躍の人や選者先生の名も見受ける。

一度は「遥照」の門を潜った人達の作品(十句中2句)を紹介しよう。   

 

    太田蘆青「金の梵字」

  惜しみきれなき青空や竹の春

  末枯や金の梵字の仁王門

   西山防流「新領土」

独りゆく晴れの花野は是非の外

乾びたる池の鶺鴒新領土

    島村博子「自然讃歌」

  水温む先争ふもとどまるも

借景に大河大海囀れり

   清中蒼風「美神」

貝寄風や眉のかげりし美神像

沙羅咲くや樹上に十花地に十花

   坪井翠「蝶の昼」

蝶の昼予告なく来る女客

拝領の画を曝したり里の寺

   内藤吐詩朗「紅梅」

雪のせし紅梅さらに艶めきぬ

臍を出す鉄棒の子も花の下

   藤枝桃苑「匂ひ壺」

竹の杖句の杖つきて初詣

家々に梅咲き谷は匂ひ壺

        傍線は故人

さて芒に戻ろう。言葉は種に似ている。種を飛ばして軽くなったような芒でも、「はらりと重い」存在感がある。俳句の種を撒きながら、その風を思い起すのはなんと素敵なことだろう。

石津淡紅さんの「ことばの広場」の言葉にヒントをもらった。

「わが句歴を振り返ってみて、よく続いたな!と妙に感心するのです。仲間がいるから句会があるから、なのだと感謝するばかりです。自分らしく自分の香りのする作品をと、目指すハードルは高いのですが、なかなか満足には至りません。スランプもしばしばですが、「俳句は日記」「自分史」と思って、「遥照」の道場を愉しませていただいています。」(2003年合同句集より)

 

蟷螂のよろりと枯れを尽しけり  石津淡紅

 

「はらり」「よろり」この俳句のよろしさを味わうのに、秋は良い季節だ。

            やんぬるかな!

 

Posted on 2016/10/27 Thu. 13:11 [edit]

category: やんぬるかな

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やんぬるかな57 

やんぬるかな57  
敗戦の数ほど咲きし彼岸花  木割大雄
祝杯の酒は選ばず寝待月     〃

前回は浪速のプロデューサーこと木割大雄先生の俳句で終わった。阪神タイガース’85年の優勝(吉田義男監督)を挟んで4年分のスポニチ連載句「虎酔俳句集」より選んだものだ。
秋の蚊を打つは未練の掛布かな   〃
灯ともして川藤情話に古酒少し   〃
 
「虎酔」の往年の名選手に古酒少し・・といきたいところだ。ファンというのは、負けても負けても、明日を信じ夢を追うものだ。最下位・定位置のタイガースが優勝した時のフィーバーは昨日のことのように思い出される。敗戦の数ほど・・寝待月(月の出が遅いので寝て待つ・・秋の季語)・・この野球愛はどのチームでも同じことだ。
 今年の秋は広島が湧いた。そろそろ阪神を見限って、そろそろ広島東洋カープに、乗り換えるかと、思っていた矢先のことだ。25年ぶりにセ・リーグ優勝を決めた10日、NHKナイター巨人―広島戦の平均視聴率は、広島地区では、60・3%、瞬間最高視聴率は71・0%だった。これまで82勝中、42回までが逆転勝利の広島だ。その日、またしても赤で埋めつくされた東京ドームは、「神ってる」=神がかる逆転となった。
この優勝には、新広島球場の開場が多いに貢献していると思う。駅から歩いて10分と利便性があり、パフォーマンスシート・砂かぶり席・ただ見エリアなどの観戦のアイディアが詰まっている。「MATUDA Zoom Zoomスタジアム広島」命名権(三億円)のコピーもイケイケ・ドンドン!ズーンズーン・ブーブー(幼児語の車)!なかなかなネイミングだ。
ファッショナブルなカープ女子も現れた。黄色い?声援ならぬ、赤い装束(応援グッズ・ユニフォーム)で身を固め、効果てきめん!神がかる!
 カープの優勝効果は331億円と言われている。当分広島は赤色に染められることだろう。
       
さて話は変わるが、「やんぬるかな53」で紹介した小畑晴子さんから第五句集「蛍火」が届いた。これはまた紹介するが、彼女の充実ぶりには驚かされる。「俳句文学館」(俳人協会新聞)8月号に、写真入りでその快挙が掲載されている。
俳人協会創立55周年記念(関西ブロック)
【第51回関西俳句大会賞・朝日新聞社賞】
  抱き取りし子になまはげの藁匂ふ 小畑晴子
 受賞の言葉に句作のヒントを見つけよう!
ひたすら写生貫いて:大会賞・ 小畑晴子
「東北への旅吟の折、阿波野青畝先生のお車に同乗させて頂いた。その時先生は「晴子さん、歩くことや!見ることや!」とおっしゃった。俳歴が長く、5人の先生に師事し、どの先生にも歩くこと、写生を貫くことを学ばせて頂いた。一人暮らしの自由さに国内はもとより、海外まで足を伸ばし、ひたすら写生に徹した。その中の「なまはげツアー」は圧巻で、10数人のなまはげが小高い山の上から奇声を挙げ、地響きを立てて迫ってきた。喚ぶ声と共に、闇に舞う雪と松明の火の粉が印象的だった。今回のこの大賞にお選び下さった先生方、そして結社でご指導頂いている主宰に心よりお礼申し上げます。」

 「第55回全国俳句大会」の選句集が届いた。
  捕虫網蛤御門くぐりけり   小畑晴子(入選)
応募総数一万4千一八六句の中から、大会賞六句、秀逸賞七句が選ばれた。因みに岡山からは、入選一句、予選通過作品は二七句だった。(一部)
  太き榾返す米寿の耳透けて    密田真理子
  麻痺の手に持たす手鏡初桜    白神知恵子
  観音のひしめく御堂竹落葉    柴田奈美
  子らの声ひとつに山車の動き出す 横田多禾(入選)
  渡し守いとま春筍掘りゐたり   杉本征之進
  いせみちとみのぢの分岐風光る  工藤泰子

 香川県14句の中に・・
  旅に買ふかみそり一つ秋の蝉  涼野海音
さて地元では、「第十一回浅口市俳句大会」が十月十五日に開催され、浅口市文化祭でも、入選句の発表がある。市内の一部の小・中学生にも呼びかけていて、定評もある。
前回紹介した「俺」こと木割大雄先生は兵庫県伊丹市の教育特区「ことば科」の特別講師をされている。伊丹市内外30校以上の小・中学校の俳句授業に招かれ、こどもたちに(ことば・いのち)をテーマに語りつづける活動は、新聞等に紹介されている。
 木割先生から「俳句の小径」という冊子を頂いた。
【小学校で五・七・五のリズムにのって自由に書いてみようという授業を続けている。が、あるとき中学校に招かれた。一年生の教室。中学生だから、季語について分りやすく説明した。その上で5分間で一句つくってみて、と呼び掛けた。季語は「おでん」と。・・中略・・私は彼らに、おでんの具は、みんな生き物でできているぞ、・・すると、
  「大根もしっかり生きてる命だよ」
  「だいこんを黒く染めてるダシがある」
  「おでんとは家族と具材を結ぶもの」
  「おでん食ううまさは母の愛情だ」

俳句とは生命を詠うもの、ということを知ってもらいたい。書くことで、言葉の力を自覚してもらいたい。その出発点になってほしい、と願っているだけ。】
発見のカタマリの子供俳句を紹介しよう。
  「さなぎから顔を出したらまぶしいよ」(昆虫館)
  「さくらの木秋になったらふつうの木」
  「はっばはねおちているけどいきている」
  「太い木にまたあたらしいえだがつく」
  「あきにはねいろんないのちのなきごえが」
  「秋になりひとがやさしくなってくる」

「ことば」が「いのち」があふれている。
彼らにエールを送りたい!やんぬるかな!

Posted on 2016/09/23 Fri. 09:12 [edit]

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やんぬるかな56 

やんぬるかな56  工藤泰子
キャラメルの赤き帯封原爆忌   吉村明
前回の句である。被爆した沢山の子どもたちにキャラメルの帯封を切らせてやりたかった!キャラメルが特別だったころの時代も反映している。物と情報の溢れる今は、立ち止まって考えることも難しくなった。
さて、リオ・オリンピックが始まって夏の暑さが過熱している。水泳・柔道・体操・卓球・カヌー・テニス・バトミントンなどなどなんと快進撃!
 テニスは錦織圭くんの大ファンなので、絶対にライブ(生放送)と決めている。テレビ応援は深夜にスタンバイし、現地の都合によっては、夜明けまでということもある。銅メダルを決めた試合では、あと一息という所で追いつかれ、手に汗握る最終セットを闘う(応援も必死)ことになった。試合の“イフ”は勝ちさえすれば“ノープロブレム”となる。
日本では高校野球が、ヒートアイランドと化した甲子園で、熱戦を繰り広げている。
〈甲子園球場〉というと〈タイガース〉→〈酔虎〉→〈木割大雄(きわりだいゆう)〉→〈俳句〉?
木割大雄・句集「俺」より 著者略歴
昭和13年兵庫県西宮生れ。
昭和36年結核療養所にて俳句に遭遇。俳誌「閃光」「天狼」「青」を彷徨。
昭和37年「青」百号記念会の来賓・赤尾兜子(とうし)の講演を聞く。
昭和47年「渦」入会。赤尾兜子に師事。
昭和56年3月17日、赤尾兜子急死。翌年「渦」退会。
平成8年 個人誌「カバトまんだら通信」を始める。
 著書「酔虎俳句集」、「江夏豊の俳句」私家版、「南のくにに雪だるま」・・「信子のなにわよもやま」(桂信子の対話講座・・聞き役をつとめる)

木割大雄=「俺」を句集出版記念会の顔ぶれで探ろう。出席者名簿によると、俳人の宇多喜代子・茨木和生・大石悦子、仏教学者のひろさちや、ラジオパーソナリティの道上洋三、フォークシンガー紙ふうせんの後藤悦治郎、他にも書道家、華道家、落語関係、琉球舞踊研究家、近松応援団、木割組など、150人を超す多彩な人間模様である。
神戸新聞に句集出版と、その記念会のことが出ている。「阪神間を中心に広い人脈を持ち、数々の個性的な文化イベントを仕掛けてきた『下町のプロヂューサー』としての顏もある。・・・長年の阪神ファンで、スポーツ紙に13年間、タイガース俳句を連載していた。」「宇多さんは句集に寄せた文章で『亡び』を受け継ぐのが俳句の俳句たるところだろう!と書いた。タイガースの最下位も、アイヌも琉球も・・いわば『亡び』の側の命運を背負っている・・」「これが木割文学の本質!と見事に突いている。」
「私」と「俺」は20年くらい前に出合った?長門の“金子みすず俳句大会”の選者が、茨木和生、宇多喜代子、寺井谷子、赤松薫子、木割大雄先生のお歴々の時、運河の重鎮に交じって前泊して参加した時だ。山口県で俳句をしていた亡父は赤松先生と交流があったので、厚かましくも参加したのだ。電車の中でも、宿でも、行く先々で句会がある。恥はかき捨て、運河の大先輩にしごかれ、励まされたことは財産になった。「俺」と「その仲間」とは青海島を船で観光し、同じ風に吹かれた。その俳縁に感謝する。
また、地縁もある。「俺」は鳴尾高校OBで、息子と娘の母校の先輩にあたる。
句集「俺」(角川書店)はタイトルだけでなくカバーも技ありだ。豚の蚊取線香の口から、鉢巻の「俺」の顏写真が覗いている。カバーをめくると蔦に絡まる甲子園と「番傘の俺」の写真(平成14年)が渋い。 
註 平成20年、球場はリニューアルされた
もしも、これが豚の貯金箱だとすると?「俺」の絵にはならない。さあ蚊取り線香に火を点けよう。打ち上げ花火ではないから、ぐるぐる煙が出るだけ・・。人を煙に巻くことはできそうだ。裏カバーの俺様は「俺」と白抜きの法被の背中を見せて豚上に鎮座?されている・。勝手に詮索してみると、師、赤尾兜子の「渦」に巻きこまれた頃を懐かしみ「うずうずしたいから・・」大阪のおばちゃんの突っ込みとボケには迫れない。あくまで明るい「俺」だが、句集の中味は濃く、根本を鋭く突き心に深く届く。
【句集「俺」】
 鰯雲未知の明日へ退院す     「彷徨」
 つまみ食う海鼠の雌雄など知らず  「渦」
揖保川のわけても春の白驟雨    「兜子」
へてからもちゃうちゃうもある花見かな「下町」
わが窓のエッフェル塔や月満ちて「ヨーロッパ」
耳鳴りに非ずや火事の音おんおん「禱り」(震災)
安南の曲も琉歌も後の月      「琉球」
後悔のうねりに似たり秋の海    「隠岐」
がちゃがちゃや島の宴のそのあとに 「隠岐」

【カバトまんだら通信】 第三期2号 H22年
 蝉とゆくわが自転車の擦過音
 人を見る蜻蛉の目玉と麒麟の眼
 大漁のごとく遠泳の子ら戻る(鳴尾高校後輩たちに)
  ※鳴尾高校の恒例の合宿と遠泳・次男は下級生の指導に参加したことがある。
 鬼灯を真っ赤に男棲みにけり
  ※2014年に亡くなった藤本安騎生先生(俳人協会賞受賞)高見山の見える「深吉野」のログハウスは俳人の憧れの地
【カバトまんだら通信】 第四期1号 H28年
 螢火や師父より何も引き継がず
 初盆やマッチ一本擦り減らし
 一日に長短ありぬ百日紅

“木割大雄”をキャッチコピーすると、
きらり☆阪神なひと  志はメジャーやねん
坂口裕彦(毎日新聞・外信部)

木割大雄はナンギなおっさんである―跋文に代えて
       時岡禎一郎(元毎日新聞阪神支局長)

真っ赤な表紙の「カバトまんだら通信4-1」の「こんにちは」を読んでみよう。
この「通信」は完成しないジグソーパズルのようなものです。・・・私の自由気ままなひとり言です。

さて、オリンピックも、中盤にさしかかり、甲子園球場では、白球のドラマが繰り広げられている。今年の金本阪神はどうなるだろう。星野阪神が優勝した時のメンバーのTシャツを後生大事に持っている。赤星、今岡、桧山・・スタンドでメガホンを叩いた日もあった。
「スポーツニッポン新聞(大阪版)タイガース俳句
 「虎酔俳句集」より  昭和63年刊 
 投げる打つ守る走れる風光る
豆飯や悪報軽く聞き流す
 盆の月敗戦打者を照らしけり
残されし夢呼ぶ九月のホームラン
秋の蚊を打つは未練の掛布かな
灯ともして川藤情話に古酒少し
 
酔虎と言っても名句ばかり・・阪神の心情を包んでくれて、ファンも酔虎になれる。
一月に「運河創刊60周年・750号記念祝賀会」で、木割先生にお会いした。岡山からは、杉本征之進・高木幸子等も出席して、談笑のチャンスを得た。
甲子園と蚊取り線香・・揃うと「俺」を思い出す。
敗戦の数ほど咲きし彼岸花
祝杯の酒は選ばず寝待月

野球を離れて成立する句だ。
            やんぬるかな!

Posted on 2016/08/23 Tue. 11:02 [edit]

category: やんぬるかな

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