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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな68 

やんぬるかな68  工藤泰子
前回は、金子敦さんの第五句集「音譜」から、次の句を紹介した。
噴水はまこと大きな感嘆符  金子敦
 FB(フェイスブック)では、猫好き俳人?の括りで交流がある。(金子すずちゃん&工藤空・工藤海・・)
さて、「感嘆符!」と言ってのけた「噴水」は他の句集では、こう語られた。
待ち人は来ず噴水は繰り返す 敦
噴水の音と重なるわが鼓動  〃
以前、山陽新聞のコラム「滴一滴」に彼の次の句を発見し、すぐにお知らせしたが、もちろんすでにご存知であった。さすがスイーツ王子だけあって甘い仕立ての作品だ。カラフルなマーブルチョコと夏休みの取り合わせは実に楽しく、どの子にもキラキラした一日が、次々と箱から飛び出してくるようだ。
夏休みマーブルチョコの赤青黄 句集「冬夕焼」  
プロフィール;金子 敦(かねこ あつし)1959年、横浜市生まれ。未来塾俳句教室講師。「出航」会員。句集『猫』『砂糖壺(第11回 俳壇賞受賞)』『冬夕焼』『乗船券』『音譜』 好きなもの・猫、スイーツ、漫画、カラオケ、書道、百均、その他いろいろ。
「ラスカル」「あっちゃん」の呼び名で、抜群な人気!もちろん俳誌でも、有名な俳人である。その人脈も、杉山久子さん、鈴木茂雄さんなど多彩で、チャットを垣間見ていると、俳句界の「今!」を体感できる。
 句集は手に入らないので、鈴木さんや他の人の評論から、5つの句集を、覗き見させてもらった。
 第1句集「猫」
 ボールペンの先端は球鳥渡る
 折紙の裏は真つ白昼寝覚
 方眼紙にみづいろの罫小鳥来る
 朝蟬や練乳缶に穴二つ
蝉の穴と練乳缶の穴!穴の一つは空気穴である。どの句も好奇心の強い猫のような発見に驚く。
第2句集「砂糖壺」
鈴木茂雄さんの評によると、句集のタイトルは第11回俳壇賞受賞の作品「砂糖壷のなかに小さき春の山」に由来しているそうだ。ここでは、「夕焼」の作品を3つ選んだ。今まで、何気なく見ていた“夕焼”が、とてつもなく不思議なものに思える。太陽が沈む頃、青色光は拡散され、波長の長い赤色光だけが、地上に到達するために起る現象なのだ。闇の始まる前に!
夕焼や蹴るには大き過ぎる石
夕焼やきのふのやうな少年期
夕焼のはみ出してゐる水たまり
 これらは“夕焼”との関係で必然性を持つことになった。どの句を見ても、口調はやさしいのに、いつのまにか深く、核心まで導かれてしまう。これこそは新しい俳句の方向性ではないかと感じ入った。
いい人と言はれて淋し水中花
月白や手紙のやうにガム渡す
蜻蛉の風をほどいてゆきにけり
CLOSEの木札かたんと鳥渡る
戻り来し猫の足拭く十三夜
 さて猫好き作家の猫ぎみ!十三夜の季語が絶妙だ。足拭く・・これも多くを想像させた。
第3句集「冬夕焼」
   吸飲みに残りし水や冬夕焼
「2006年、金子さんのご母堂が逝去された。この作品はその遺品のひとつを詠んだものである。巧みな心象風景の句であるが、ここには小手先の技巧は微塵も感じられない。こころの奥底から出たはだかの言葉だからである。(栞・鈴木茂雄)」
   永遠に消えない虹を分かちあふ
   少年の吾に呼ばるる草いきれ
   大いなる花野の果ての無人駅
第4句集「乗船券」
   月の舟の乗船券を渡さるる
 いったいどんな「乗船券」なのか?
「月光のかけらのやうな竹落葉」という句や次の句も気になるところだ。
   望の夜や母の遺影を窓に置き
   満月の向かう側より呼ばれけり
天上の母が落とせし木の実とも
 この句集の評は、故澤田和哉さんの(敢て彼が言うところの)「誤訳『乗船券』」を紹介したい。
実は4年前、澤田さんとは、与謝蕪村顕彰の表彰を受けた時、受賞した人たちと一緒にカレーライスを食べた、という、浅からぬ縁があった。
とりあえず、二人の作品だけを紹介しよう。
     京都府知事賞
はんざきの口水平にあいてをり  工藤泰子
     宇多喜代子賞
豚肉のぷるぷるしたる大暑かな  澤田和弥
二年前のこと、若手俳人として活躍されていた澤田さんの訃報をFBで知った。それで、「誤読」という評論があることも判った。彼は言う。
【「乗船券」は「死」の世界の切符ではあるまいか】
この強い言葉には、彼のダイイングメッセージも込められていたのだったのではないか。
さあ、そこは払拭し、新しい夜明けを見つけよう。
「新涼や帆船の絵の切手貼り 敦」!

 さて、最新のフランス堂から出版された第5句集も、人気だそうだ。さすがにプロ顔負けのカラオケ名人は、句集「音譜」にその要素をぎっしり盛り込んでいる。「音譜!」と「言葉!」を繋ぐものは?五線譜と五七五の出会いを楽しもう。
 噴水の高低、緩急、リズムを思い出そう。夕焼の移り行く色を思い出そう。音と調べのドラマを・・。
第5句集「音譜」
白南風や楽譜に大きフォルティシモ
 ハーモニカにあまたの窓や若葉風
 シンバルの連打のやうな残暑かな
 十二月八日やシュレッダーの音
 春を待つ八分音符に小さき羽
 トランペットより薫風の生まれけり
 ティンパニを叩けば風の光り出す
 楽団の荷に弾みたる木の実かな
 葱提げてピアノ奏者の帰りけり
 るるるるとららららららと萩こぼる
 これらの敦ワールドで“ぷにょぷにょ”に癒された後は、月のBGMを聞きながら、猫と過そう。
  猫の尾のしなやかに月打ちにけり  敦
「猫俳句パラダイス」より
  月を見るひとりは猫を見てをりぬ  敦
さすがに、月と猫は切り離せない。
  
            やんぬるかな!

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Posted on 2017/08/24 Thu. 10:55 [edit]

category: やんぬるかな

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