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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな53 

   やんぬるかな53  工藤泰子
草の絮ファウルボールを追ひかけて 嵯峨根鈴子
反撃のチャンスはんかち畳み終へ    〃

 はんかちはハンカチーフ夏の季語である。2006年甲子園を沸かせたハンカチ王子・斎藤祐樹の青いハンカチをを思い出した。早稲田大学へ進学し、大学を日本一に導いた王子だが、プロではパッとしていない。一方の田中将大は、楽天、ニューヨーク・ヤンキースと、とんとん拍子だ。反撃は、守るだけではダメ。攻撃=俳句へのさらなる挑戦!の決意と見て取れた。ちょうど、前回(52)を書き終わったころ第3句集「ラストシーン」が届いた。またまた思わせぶりなタイトルだ。この本は、いずれ紹介することにして、さわりだけ・・・・
  紫陽花のはしやすぎたる翳りかな 嵯峨根鈴子
  でんでん虫こゑを漏らしてしまひけり  〃
 
さて、俳句賞はたくさんあるが、句集に与えられるものと、作品に与えられるものがある。
句集では「現代俳句協会賞」・「読売文学賞詩歌俳句賞」・「俳人協会賞」・「蛇笏賞」・「俳句四季大賞」等があり、今年の第34回「詩歌文学館賞」は、運河主宰の茨木和生『真鳥』が選ばれた。この賞の歴代受賞者には、平畑青塔、加藤楸邨、永田耕衣・金子兜太・鷹羽狩行・宇多喜代子・有馬朗人などそうそうたる俳人が名を連ねている。
東吉野で毎年開かれる「運河」の句集祭は急遽受賞のお祝い会となった。
一方の作品に与えられる賞では、“俳句界の芥川賞”と呼ばれる「角川俳句賞」(選考委員は正木ゆう子、仁平勝、小澤實、高野ムツオ)や「俳句研究賞」等があり、50句で争われる。「俳壇賞」、「俳句朝日賞」など30句のものもある。常連の応募者も多くとにかくハードルが高い。
角川俳句賞は、予選通過作品から本に掲載される。
谷口智行さん(「運河」里」「木偶の会」・・)の「候補作品」「西ようず」を少し紹介する。
※西ようず;春先に西日本で吹く南風を「ようず」と呼ぶ。南西からの風は「西ようず」※
海底は沈木の森西ようず     谷口智行
きりぎしの道の曲りの緑雨かな   〃
磯馴松磯馴姥目に薬降る      〃
彼は現役の医者で、「運河」の編集長でもある。
※句集「藁嬶(わらかか)」「媚薬(びやく)」、俳句と文章「日の乱舞物語の闇」、評論集「熊野、魂の系譜」など※
難解な句ばかりだ。曼荼羅のような世界観に圧倒されながらも、辞書を片手に解読すれば、ゲームより楽しめること請け合いだ。

 今度は、新人賞に目を向けよう。「星野立子新人賞」は20歳以上、50歳未満の人による未発表50句が条件である。この第4回の賞に、四国の涼野海音さんが選ばれた。昨年8月、「遥照本句会」に海音さんが来訪された時には、「えっ!若い!」と驚いた人も、「やっぱ凄い!びっくりポン!」と喜んで欲しい。今年も倉敷俳句大会のゲスト選者だ。
今(なう)岡山は、黒岩徳将代表の「もも句会」の新風が吹き荒れている。楽しみになって来た。
 「星野立子新人賞」(男女各一名)  一部・・
    大西 朋 『初筑波』
電球を淋しくしたる蜘蛛の糸
 飛び石の真中くぼみて秋の声
    涼野海音 『手毬つく』
釣堀に一番星の映りたる
父の日の拳に夕日とどまれる

父と子の間に回る扇風機

海音さん(「火星」「晨」同人、「草蔵」会員)は、平成23年「石田波郷新人賞」、25年に「北斗賞」を受賞されている。北斗賞の応募作品150句は句集「一番線になった。
「一番線」
   海の日の一番線に待ちゐたる
  青葉風小舟のやうなスニーカー
  ひげ剃つてどこへも行かず羽抜鶏
  箱庭に倒れしままの釣人よ

 海音さんに、入賞の秘訣を伺いたいが、まずは応募することだ!と一笑されるだろう。
       
 もう一人、私の尊敬する俳人に登場してもらおう。俳句文学界(俳人協会会報)、NHK俳句大会、芭蕉祭、各地の全国俳句大会などの、大賞や特選の名前を探してみると、「あるある『小畑晴子』!」となる。
 〈小畑晴子プロフイール〉昭和15年大阪生。昭和42年「山茶花」入会。昭和51年「数珠玉」上梓。62年「山火」上梓。「かつらぎ」入会。阿波野青畝、森田峠に師事同人。「勾玉」上梓。平成16年「晨」入会、同人。18年「天為」「運河」入会、同人。有馬朗人、茨木和生に師事。俳人協会会員。俳句教室講師。吟晴句会講師。
40年のキャリアもさることながら、師事されている俳人の名にタジタジとなる。そもそも俳句環境の質が違うのだ。まさに“俳句を旅する”“俳句と生きる”“俳句を暮す”俳人なのだから・・・
第四句集「白帝城を頂いた。「天為」主宰有馬朗人氏の序文の一部を紹介する。(句集の命名と選も)
 天の川白帝城にしぶきけり   小畑晴子
 【小畑晴子さんの作品には品格があり、豊かな教養が滲み出ている。そして、俳句の骨法に通じていて、しっかりした俳句を作る。古希を迎えられ、ますます元気で意欲に溢れた晴子さんの、この「白帝城」が暖かく世に迎えられることを心より祈念する。有馬朗人】
書評も相当の書き手ばかりで、大いに勉強になった。
【白帝城は四川省奉節県にあって長江に臨む。李白の七言絶句「早に白帝城を発す」で有名。晴子さんは船で長江下りをされたのであろうか。「天の川」「しぶきけり」と大景を詠んだ。「白帝城」に負けない調子の句になっている。 天為書評より】
晴子さんの句には、写生の裏打ちがあり、単なる説明になっていない。「抒情性に満ちた・・」と有馬先生も感心されている。
たくさんの句を紹介しよう。人名・地名が巧みに整えられた美しい句姿に惹きこまれる。
  熊楠の庭とりどりの梅雨茸
※南方熊楠;世界的博物学者、粘菌研究で知られる。
   奥入瀬の流木を焚く夏炉かな
   夜光杯上げ敦煌の月を待つ

※夜光杯( やこうはい)は玉で作られた杯、中国甘粛省酒泉の特産。月光の下でそれをすかすと杯に光がある
  空海の山をかけ抜け日雷
   月山の霧に消えたる解夏の僧
   日蓮の島へ夕虹くぐりけり
   踏絵する足に玄海ひびきけり

 季語との取り合わせが絶妙!まさに芸術!
  忘れ潮いくつもとびて磯遊び
  まひまひは円を描かず涅槃変
  日雷摩利支天より転げ来て
   新涼の弥撒に膝折る古畳

  百畳の畳に解けし雪安居   
  灯を消してより匂ひ立つ菊枕
 

 さて、伝説の小畑邸はトロフィーと盾が入りきらないほど(300?)と聞く。「月日は百代の過客にして・・日々旅にして旅を栖とす」現代の芭蕉の様だ。
友人の草地明子さん(運河・摩尼会)が次の様に評した。
【大きな景から繊細な感覚まで、一句の中に的確に、そして過不足なく詠みとめられています。運河書評より】

 栞たるハーブの匂ふ曝書かな  晴子 
曝書の本は何?栞は何処?
晴子マジックの秘密のページが覗きたい。
                やんぬるかな!
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Posted on 2016/05/26 Thu. 10:01 [edit]

category: やんぬるかな

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