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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな43 

やんぬるかな43 工藤泰子
  前回は、「関西俳句なう」から若者の句を拾った。
真実の口とは深し原爆忌 森川大和
映画「ローマの休日」で有名な「真実の口」のことだ。偽りの心がある者は、手を抜く時にその手首を切り落とされるという伝説を踏まえている。「真実の口が深い!」これは手を入れた者だけが知ることができる事実かも知れない。
「何がうそ何がほんとの露まろぶ 万太郎」この俳句は白神知恵子さんの句集「女坂」序文から引いたものである。「何がほんと」が気になったので、次の句と並べて紹介した。
何一つ置かぬ贅沢夏座敷   白神知恵子
白神さんというと、岡山俳人協会の大会など、入賞の常連で有名だ。どんな人だろう?と気にかけていたところに、句集「女坂」の恵贈に預かった。
出版社は「文學の森、パールホワイトの本に藤紫の帯という品の良い御本である。「あたたか」の季語に合わせ、その時期に、贈られたのだと悟った。俳句を見て行くうちに「これは?」と思い、まずは序文(安立公彦)、跋(三上程子)、あとがき(作者)と一気に読んだ。衝撃が走った!“この句集は多くの人、多くの女性に紹介したい!”と思った。
あとがきによると、河田紅村先生に誘われたのが縁で俳句に嵌ったそうで、入会(昭和59年)して、安住敦主宰、成瀬櫻桃子主宰、鈴木榮子主宰、安立公彦主宰と「春燈」一筋三十年のキャリアだ。
「女坂」の題を見て、京都の知恩院を思い出した。(家康の帰依により菩提所、門跡寺院として拡大・法然上人の浄土宗の総本山である)。山門は国宝で、現存する日本最大の木造の門である。その門を潜れば、急峻な男坂と緩やかな女坂があり、どちらからでも御影堂(国宝)へと至る。この坂を登ったであろう古人に思いを馳せながら、読み進めたい。
まずは帯文!
「後押しの風あたたかや女坂」
この「後押しの風」が擬人化されたものであり、「あたたかや」のうしろに「人」の居ることが察しられよう。「女坂」という言葉が、時に優しく、また時に、その優しさの中に、一すじの引き締まった語感をもって、読み手の心を捉えるのである。足立公彦
 ここでは、「後押しの風」に注目しよう。これには訳がある。順風満帆だと思われた人生に、厳しい風が吹いたことがあった。次の文章は辛いものだ。
「俳句を始める9年ほど前、次女を4歳で亡くし、陥った奈落から這い上る手段を種々試みた中で、俳句が最も強い味方になった」とある。
 安立主宰の序文より一部!
   お節囲むと約せしままに娘は逝けり
   知らぬ児がそつとぶらんこ押しくれし
   つらさより優しさに泣く花の冷
 
○註24年、牧師と結婚された長女も病で逝亡された
その娘さんの逝かれた日、白神さんは、「春燈」25年2月号の、「久保田万太郎の句鑑賞欄」に〈何がうそでなにがほんとの露まろぶ 万太郎〉の一文を投函。娘さんの死はその日と聞く。「久保田先生のこの句は、その時の私の心境そのものでした」と、後日私への私信の中で白神さんはそう語る。
  白い花ばかりを活けて暑に堪ふる   
  何一つ置かぬ贅沢夏座敷

ともかく俳句をたっぷり紹介しよう。過去に思いを馳せて読むと、多くの物語が立ち上がる。一行の俳句が、心の処方箋、心の栄養剤となって皆に勇気を与えてくれる。
【泣きなさい!でもちょっと切ない】
花冷や別れに慣るることなどなし
ハンカチを干せば昨日が遠ざかる
(涙も乾くといいね!)
泣くとせばホルンの音色かたつむり
 (形はホルンだけど・・音は出ないよ!)  
ぶらんこの止まれば心また揺るる

くすぶる火なだめて吾児の魂送る

【笑いなさい!でもちょっと複雑】
尺蠖の尺を取りつつ退散す
嚔して佳境の科白聞きのがす
野火煙にどろんと消ゆる郵便車
如何やうに包んでみても西瓜かな
 (大きな西瓜を丸めこむ大風呂敷)
罌粟散りて発心の頭丸めけり  
(高野山の句ならでは、発心と罌粟坊主)
新松子子等育ちてはちりぢりに
 (青松毬の松子はちぢりと読むのだから)>

【呻りました!真骨頂】
夏燕棟梁槌を宙に受け
 (燕返しと槌さばきと)
乱調の美と言ふことも鉄線花
一徹のすり減りしもの涼しく着
豌豆の生涯藁にすがるかな
(蔓は藁をも攫む・縋る)
真砂女迎へ備前卯波のさんざめく
 あるときは舟より高き卯波かな 真砂女(中国大会)
道問へば空に地図画く袋掛
初釜や佳きにほんごの交はさるる
叱らるるも妻のつとめよ麻暖簾
 (暖簾に腕押し・・少し強気?)
女竹かな皮脱ぎ捨つることをせず

うだうだと感想を書いたばかりに、句意から遠くなったことをお許し頂きたい。しかし“佳きにほんご”に触れ、それを紡ぐ人に出会えた喜びでいっぱいだ。次の句にも発見があった。
           峡暮るる蛍袋に風納め   
 風を見つけたら、蛍袋に納めよう。言葉を紡いで、魂を吹き込んで膨らませるのだ。蛍袋の風は「後押しの風」となって背中を押してくれるはずだ。
 
 話は変わるが、購読している雑誌「いきいき」の特集「言葉の力、再発見」に、俵万智さんの石垣島の暮しと、歌集「オレがマリオ」が紹介されていた。
「大きな自然を目の当たりにして、あらためて人間のちっぽけさを感じています・・。」
「残された時間の手触りを感じるようになって、心に沿わないことはせず、心に沿うことを思いっきりやろうって。」

 助けられてここまで来たよ 島ぞうりの鼻緒のかたち 人という文字  俵万智
 母さんは合っていたのか 人生に答え合わせはなくて 海鳴り   〃
   
 女坂を登り続ける覚悟・・どこか似ている。     やんぬるかな!
 
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Posted on 2015/08/03 Mon. 12:46 [edit]

category: やんぬるかな

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