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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな26 

やんぬるかな26 工藤泰子
 前回は賀状の“馬齢重ねて・・”の句を紹介した。
元朝を馬齢重ねて迎えけり   木割大雄
謙遜の言葉の「馬齢」だが、「馬鈴薯」の「れい」は鈴なので、馬鹿にした薯の意味ではない。
最近の年賀状はパソコンで簡単に出来る。家族、ペット、旅、自作の絵などの写真入りは個性的で、どどんと楽しい。毛筆の手書き、版画、俳句などは、じっくり鑑賞モードとなる。二十日正月ごろ“お年玉つき年賀はがき”の抽選がある。今年は当たりを増やし、下五桁で一万円!四桁でふるさと小包!と期待したが、二桁の切手シートしか当たらなかった。一年は速い!馬車馬の様に走れば「光陰矢の如し」である。「光」は日、「陰」は月の意味で、「光陰」は月日や時間を表す。
「少年老い易く、学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず、未だ覚めず・・・」中国の儒者であった朱熹の「偶成」と題した詩である。光陰流水の如しも同義語である。
新しき生命が土を割る雨水  檜尾とき魚
待春の音源流のしづくにも    〃

世界遺産、富士山の雪解水は溶岩の間を約二十年の歳月をかけ濾過され、山梨県忍野村の八つの湧水となる。「忍野八海(おしのはっかい)」と言い(英名はSprings of Mt.Fuji)国指定の天然記念物、名水百選にも選ばれている。しかし最近では、水質の悪化や枯渇が危惧されて来た。観光地化による環境破壊が要因の一つだ。岡山、真庭市の大山隠岐国立公園「塩釜の冷泉」を訪れたことがあるが、あまり知られていないのが幸い踏み荒らされていない。
木曽川水系の養老の滝も百名水の一つだ。「養老孝子伝記」では「偶然、樵の子が見つけた滝がなんとお酒で、病弱の父親に飲ませたら、元気になった!」と言う“菊水泉”のことだ。居酒屋チエーンがこの名前を使っているので、全国的に知れわたった。水がお酒になるのは夢・幻だとしても、水は命の根源、命運である。湯水のように(金を使う様のこと?)出る訳ではない。これからは日本の“資源”として、綺麗で安心な水を守らなければいけない。
春の水星の渦より汲んできし   高橋将夫
湧くところすこしくぼみて春の水 鷹羽狩行
手をのせて春水といふ平らかな  岡本眸
春水の明るき方に志す     能村登四郎
水の春上りとちがふ坂下り    奥田節子

 
 話は変わるが、「熊野、魂の系譜」という本を紹介したい。著者は「やんぬるかな」には度々登場する「運河」編集長、「里」同人の谷口智行さんである。「歌びとたちに描かれた熊野」の副題があり、帯文 「隠国(こもりく)熊野は表現者の聖地、シャングリラである。本書によってまた一歩、“魂の地”熊野が近くなった。」

その歌びとたち;「前登志夫」「伊良子清白」「与謝野寛」「与謝野晶子」「斉藤茂吉」「襗迢空」「スサノオ」「梶井基次郎」「森敦」「立原道造」「中村苑子」「三島由紀夫」「蕪村」「荻原朔太郎」「中上健次」
三百頁の大作は前回の著書「日の乱舞 物語の闇」より考察が深まっているように見受けた。
 それらを紹介したいところだが、とりあえず、著者の俳句の原点「熊野大学俳句部」を開設した

中上健次(芥川賞作家)の言葉を引用する。
「何しろ五七五って俳句のジャンルは、ぼくらの散文の世界で言いますとね、四百字原稿用紙で一行ですよ。その一行で、例えば一行の文章、一行でね、僕らの十枚の短編とか、あるいは三百枚の中編とか、千枚の長編という物と同じジャンルで匹敵しようとする。非常に躍進的だし、生意気だし、俳句ってのは面白いジャンルですよね。そうすると素人から本当の玄人まで、一行の中に三歳の子も作れるし頭の中が図書館みたいになっている人まで五七五を作ることができるという。短いし、膨大という不思議なジャンルなんです・・中略(使い捨てカメラのように)非常にハンディであること、・手に持って何処へでも行ける、非常に攻撃的なんですよ。・・・ふらっと行ってその瞬間をぱつと捕まえられる。・・大きなカメラを持ってスタジオカメラマンとか専門家から言うと、中々馬鹿にできない。(一九九一年十月)
長靴はどこへもゆけて水温む  茨木和生

白梅や性善説にどつぷりと   宇多喜代子

健次没後の三年間は「熊野大学」の専任講師は茨木・宇多両先生が引き継いだ。
宇多先生の「ケンジアカデミア」の文章を引く。
「世界一短い詩であっても物が言えるということに対し、極大な物を書く健次は素直に畏怖していた。彼は俳句の定型、切れ、省略の技法を認め、理解し、そういった俳句に感心を示した。そして『俳句のような短編を書きたい』ともかたった。健次はまた、いわゆる手練の句を見抜き、そういった作品は採らなかった。知識で俳句に入ってきたのではなく体で入って来た・・」  
早春の日のとろとろと水瀬かな  飯田蛇笏
春暁のあまたの瀬音村を出づ   飯田龍太
春水の底まで届き棹しなふ    大串章

水の俳句をいろいろ見てきた。春の水の温み、瀬音、やわらかさなどを“一行”で言い得ている俳句だ!“一行”を膨らませる鑑賞をしたい。
「時は金なり」の諺がある。ギリシャ神話の「時の神」には計ることのできる、流れる 「時間」を意味する "クロノス" と、ターニングポイントなどの一瞬の「時」を意味する "カイロス”の二人 がいる。カイロスは肩とカカトに翼を持った少年なのだが、頭には、ひとつかみの前髪しか無い。"カイロス" つまり "チャンス(好機の時)" を捕まえるには前髪をつかむしかない。 通り過ぎた後を追いかけても、後ろ髪が無いので捕まえられない。
   ゆく河の流れは絶えずして・・方丈記
                 
  うしろより見る春水の去りゆくを 山口誓子      やんぬるかな!
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Posted on 2014/02/18 Tue. 08:11 [edit]

category: やんぬるかな

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