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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな66 

やんぬるかな66  工藤泰子
爛々と昼の星見え菌生え    虚子
前回は、人類学者の中沢新一氏と小澤實氏の対談集「俳句の海に潜る」から、アニミズム俳句として、芭蕉、山口誓子の句などを紹介した。小澤氏は、虚子のこの句をアニミズム俳句と証し、次の様に評した。
「昼の星のスピリットと菌を流れるスピリットが、相互貫入を起こし染み込み合っているのを感じる」
季語の菌(キノコ)は秋!山本健吉の解釈に、「空に大白星(金星)、地には紅天狗茸か月夜茸・・・・抽象的絵画のよう」と言う説、一方「輝いているのは、実は”昼の星”ではなくて、作者自身の眼光なのである」という説があり迷うところだ。もし、現実なら、虚子に当日見える可能性のあった星としては土星しか考えられないらしいが・・。
さて「遥照」の誌名の由来が、本の裏表紙に書いてある。1960年、遥照山の嶺続きの西の山頂(竹林寺跡地)に晴れの国にふさわしい国立天文台=岡山天体物理観測所(東京大学東京天文台の付属施設)が開設された。
開所当時、188cmの反射望遠鏡は日本一の大きさだったが、ハワイのすばる望遠鏡(口径8.2m)、兵庫県のなゆた望遠鏡(口径2m)にトップの座を明け渡してしまった。これらは単一鏡である。ちなみに、世界一のグラハム山国際天文台(アリゾナ)は11・9mだが、2×単一鏡である。
この度、隣接の地に開設される「京都大学天文台ドーム」の完成が間近となった。
「夢の天文台・宇宙一の天文台」「宇宙人を最初に見つけよう!」「第二の地球探し!」などと、広報活動も盛んだ。PR動画を見ると、国内最大3・8mの新技術天体望遠鏡で、18枚の分割鏡を並べ、直径、3・8mの一枚の鏡にするものと謳われている。見た目は蜂の巣やジャングルジムのようだ。浅口市は「天文台のまち、あさぐち」として岡山天文台博物館のプラネタリウム改修、展望デッキの整備をし、万全の態勢だ。これが観光の目玉になってくれることは間違いない。マスコットキャラクターの“ドームくん”の胸元には、大きな星が輝いている。

天文台や宇宙のマクロな話も良いが、望遠鏡の世界から顕微鏡!ミクロの世界に眼を向けよう!
それは、どこにでもある「苔」の世界だ。
以前、金光町の植木祭の講習で、「苔玉」作りをした。植物の根を土で包み、その周りをハイゴケやスナゴケで、固定する。箱庭のような小宇宙が出現し、癒しの空間となる。
「苔」は草花や樹木と比べると、体の作りはとてもシンプルで原始的、植物の祖先に近い存在で、実に変わった生き物だ。地球に苔の祖先があらわれたのはおよそ4億二千万年前。恐竜より前のことだが、はるか昔から現在まで、ほとんど姿を変えていない。「苔」は苔類、蘚類、ツノゴケ類、地衣類などに分類されるものの総称で、日本には、千八百種、世界には約一万8千種もある。
繁殖は、体の一部からでも芽生えることができる。無性芽といって、瘤や髭,円盤のようなものを付けたり、ばらまいて殖やす。まるでアニメやSFに出て来そうな、未知の生き物のようだ。乾燥しても、死んだふりをして、チャンスがあればすぐに繁殖する。ミステリアスなミクロの世界がある。
苔の花と呼ばれるものは、これらの苔類から立ち上がる生殖器官で、正確には花ではない。苔類では雌器床、雄器床がそれであり、蘚類や地衣類は胞子嚢がそれである。白い兎が飛ぶような「うさぎ苔」をもらったのでルーペで観察して喜んでいたが、アンテナの様な突起は花ではなかったのだ。貴重な種類だったのに、翌年には出て来なかった。
さて、夏の季語「苔の花」もこれを踏まえて見ると面白い。深い森や古い寺のイメージが付き物だが、「苔の花」の句をいくつか紹介しよう。
父母よりも古る兄の墓苔の花  山田弘子
鏡石にも老斑や苔の花     鷹羽狩行
水打てば沈むが如し苔の花    高浜虚子
豪商の裔は住まはず苔の花    中村三千年
水かけて明るくしたり苔の花   乙二
 仏ともただの石とも苔の花   森本林生
尼老いぬ日の澄みに苔花ひらき  長谷川双魚
香もそれも寂光院や苔の花    飴山實


話は変わるが、なかなか聞くことができない鳥の声に「ほととぎす」がある。音が出る機能のある、電子辞書で聞いてみたが、本物は久しく聞いたことがない。絶滅危惧種になるのではと心配になる。
そんな時、「深海」69号の「楸邨俳句を読む46」を読んでなるほど納得した。
ほととぎす人間こゑを断ちにけり 加藤楸邨
中村正幸主宰(楸邨の直系)の文章は、いつも示唆に溢れている。有名な次の句との比較も的確だ。
谺して山ほととぎすほしいまま 杉田久女
【大自然をほしいままに独り占めするほととぎすの圧倒的な力を見事に描いて入る・・】
楸邨のそれは、【人間探究派らしく、強く人間を自分に引きつけて描いている。「ほととぎすの声を愛でるために声を発するのをやめたというのが事実であるが、「人間」という言葉を使い、「こゑを断ちにけり」という強い言葉を使っていることに楸邨の内面の強い思いを感じる】【ほととぎすの必死の生に対するには、人間として対峙しなければならないとの思いからである】【「声を断つ」のは、命をかける程の決意で聞いているぞとの思いである。】
因みに「やんぬるかな64」で紹介した
「寒雷山脈」=青柳志解樹・今井聖・金子兜太・森澄雄・中村正幸・矢島渚男・・・、
「沖水脈」=鈴木鷹夫・中原道夫・正木ゆう子・・等の系譜は念頭に入れておきたい。
時鳥の聞き倣(な)しは、「テッペンカケタカ」「東京特許許可局」だ。一度だけ、運河の吟行で聴くことができたのは、僥倖だった。
寺に来し甲斐ありとせば時鳥   茨木和生
一枚も山田荒らさずほととぎす    〃

桜」を「滝」を「山」を守る!「自然を守る活動」を推進している先生の句である。
やんぬるかな!
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Posted on 2017/06/29 Thu. 12:40 [edit]

category: やんぬるかな

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遥照6月号2017 

                   DSC_0461.jpg
さつき百わが光陰を埋めつくす   佐藤宗生
聖五月徴兵検査なき祖国      花房柊林
長閑さや島に一つの信号機     甲斐梶朗
麦の秋行商の荷は何でも屋     中西八千代
暁闇の光を放つ朴の花        石津淡紅
日本地図広げて春の風に乗る    牧明子
荒れ田増え淋しさびしと田螺鳴く   古川澄子
石州の赤黒かわら土降れる     竹地恵美
卯の花や水豊かなる備後の地    山崎靖子
ほろ苦きものにぞ春を味はへり   森脇八重
自分史の今の一ページ花万朶    土屋鋭喜
分水嶺越えて変わりし芽吹き色   森靖子
田螺鳴く途絶えて久し子等の声   原房枝
若づくりしたかな今日の花衣     虫明有菜
春風を存分に呼ぶティータイム   藤沢絹子
運動着フェンスで乾く木の芽風   久戸瀬孝子
新しき鉢を並べつ菊根分け     徳永保美
筍を近所に配り皮の山        柚木寿代
山藤を手繰るて天に登りたし    大室瀧子
藤房の揺れて紫匂ひけり      大野雅子
大海に辿り着けそな花筏       山下和子
しばらくは一目でわかる今年竹   石井弘子
忘却の水音かすか沙羅の花    山下卓郎
一枚の布に解いて夏羽織      浅野陽
いつまでも母が主役の苗の札   南みどり
人に酔ひ酒に呑まれて花疲れ   工藤泰子

Posted on 2017/06/05 Mon. 10:11 [edit]

category: 遙照

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