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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな54 

やんぬるかな54  工藤泰子
 栞たるハーブの匂ふ曝書かな  小畑晴子
前回は小畑晴子さんの句集「白帝城」の句を紹介した。彼女は全国の俳句大会上位入賞の常連だが、この度の関西大会で朝日新聞社賞を頂かれたそうだ。俳人協会の新聞「俳句文学館」で紹介されるだろう。第五句集「蛍火」も準備中だそうだ。
もう少し、晴子ワールドを覗いてみよう。
野外劇見る草虱つけしまま    晴子
前回と同様、他誌の評を参考に読み深めたい。望月周氏(角川賞受賞)の評の一部からも、その秘密が伺えた。「一見取るに足らないような、現実の一隅で起こった出来事。しかしその一隅を的確に描き出すことによって、残りの世界全てを描いたにも等しい充実感が、一句にもたらされた。人が見落した景をひょいと詩にする写生」「この作者の写実的な句にも、心の投影がある。この作者の美質であろう」と見事に・・・。
朝弥撒に船虫の這ふ道を来し   晴子 
ところで、今の季節にぴったりの句で、酒好きにはたまらない句がある。
  桜桃忌紅きカクテル干しにけり  〃
 桜桃忌は、小説家太宰治の忌日(6月13日)で、桜桃はさくらんぼ!美人や美人の唇のたとえでもある。カクテルは、ウイスキー・ブランデー・ジン・ウオッカなどをベースに、果汁・香料などを混ぜた飲み物だ。紅いカクテルは、さくらんぼジュースの色だけでなく、太宰の愛憎の色でもあり、無頼派、破滅型と言われる生き方を象徴しているのだ。ベストセラー「斜陽」、その後「人間失格」を発表するも、「グッドバイ」執筆中に玉川上水で山崎富栄と入水自殺をしたこと・・を踏まえて鑑賞したい。カクテルを飲み干す・・干しにけり・・決着をつける助動詞「けり」が潔い。きりりとした、飲みっぷりが好きだ。
いつだったか、運河の吟行会の時、博識で行動の人!晴子さんから「早起きして『象鼻杯』へ行ったのよ!」と聞いて、象の鼻?と驚いたことがある。
大阪の「万博記念公園」の「はす池」では、「早朝観蓮会」と早朝6時開園をしていて、イベントとして「象鼻杯(ぞうびはい)」が振る舞われているらしい。
象鼻杯(象鼻盃、ぞうびはい)とは、ハスを茎の途中で切り落とし、その葉に 酒を注ぎ反対側の茎の切り口から飲むものである。葉を掲げて茎をストローのようにして飲むので、〈象が鼻で飲むことに見立て〉象鼻杯と呼ばれる。これを飲むと長生きが出来るそうで、古代中国で始まったようだ。
エジプトやインドなど他の国でも、蓮は宗教、文明に深く関わっている。
現代の日本も、蓮をモチーフにしたものに、囲まれている。仏像や菩薩像は、蓮台(れんだい)に座っておられるし、蓮の池は極楽浄土のイメージだ。本堂にはたいがい金箔の常花(じょうか)が、耀いている。
たまたま吉野の金峯山寺「蓮華会・蛙飛び行事に行ったことがある。七月七日、役行者(修験道の開祖)縁の弁天池の清浄な蓮の華を、蔵王権現に供える法要で、合わせて「蛙飛び行事」が行われる。修験者を軽んじ蛙にされた人が読経の功徳で、もとの姿に戻るというお話だ!粛々と蓮の華の行列が通るのも意味あることだったと、今にして思う。
仏教以前の古代のインドの神話に、「ヴイシュヌ神のへそから生じた蓮華の上に梵天(ぼんてん)が座して宇宙のもととなった」があり、蓮はそれ以来「蓮華座(れんけざ)」=仏像の座布団になったそうだ。
仏教では、池・沼などの泥の中から茎を伸ばし大きくきれいに咲く蓮の花を、つらいことや苦しいことばかりに見えるこの末法の世の中にあらわれた仏の悟り・慈悲に譬えている。特に葉っぱは、泥の中であっても、撥水効果で汚れないことから「煩悩に満ちた世の中を清浄に保つもの」の象徴とされてきた。
【蓮浮葉】の句を探してみた
蓮の葉や波定まりて二三枚     村上鬼城
夕闇に浮いて定かや蓮一葉     富安風生
くつがへる蓮の葉水を打ちすくひ 松本たかし
雨の輪のふえくる蓮の浮葉かな 久保田万太郎
一面に蓮の浮葉の景色かな    高浜虚子
蓮浮葉失ふものもなく満ちし   中村汀女

インドの国花は蓮で、エジプトの国花は睡蓮である。蓮と同様に、睡蓮(ロータス)も泥の中(混沌とした世界)から、水を押し上り空へと出現する!これを「太陽神ラーの誕生」と見立てているのだ。エジプト文様に使われているロータスの花は、若さやみずみずしさを象徴するもので、夕方に死んで地下世界で復活を待つ太陽神に活力を与える存在として再生・復活の象徴でもあった。王冠に似た花の形から王位をあらわすとも考えられた。神秘的な世界観を象徴する花なのだ。
さて、昭和26年、日本で最古の蓮=古代蓮が発見された。ハスの権威者・大賀博士は、千葉市の東京大学農学部検見川厚生農場で、古い地層から発見されたハス3粒のうちの一粒の開花に成功した。ハスの実、丸木舟の一部などをシカゴ大学へ送って年代分析・鑑定を依頼したところ、弥生時代(約2000年前)のものであることが判明した。それが「大賀蓮」である。
三日なほ雨に矜恃の古代蓮   能村研三
浅口市に偉大な漢詩人 "阿藤伯海"の生家を修復した「阿藤伯海旧居」があり、吉備真備を顕彰した絶筆の詩碑がある。その公園に大賀蓮の池がある。
先般訪れたときには、まだ蕾もなく、蓮の大きな葉に水滴が留まっているのを見ただけだが、その水滴の大きさもさすがは大賀蓮だと感心した。
蓮の葉っぱの表面が水をはじくことを、ロータス効果(ハス効果)という。泥水の中でも穢れないのは、葉っぱの表面には、ワックスのような物質でできた無数の突起があり、水が表面に広がらず、水滴のまま葉っぱの上を滑り落ちるからだからそうだ。このアイディアは、コーティング、撥水に応用されている。
 岡山後楽園の「花葉の池」には「一天四海(通称大名ハス)」と呼ばれる白い蓮がある。その意味は《天の下と四方の海の意から》全世界!天下!を表している。七月の満開の頃に池を渡る橋から花を見下ろせば、天下を取ったような気になれるかもしれない。
雨の矢に蓮を射る蘆戦へり      芭蕉
鯉鮒のこの世の池や蓮の花      許六
蓮の香や水をはなるる茎二寸     蕪村
一弁はわれへめくれて白蓮     鷹羽狩行
白蓮の夢よりすこし遠くかな    山田六甲
蓮の花見飽きし鯉の沈みけり    大串章
蓮花の名残りの岸も朝の雨     小澤克己

古代文明や歴史を踏まえて蓮を見ていると俳句の中味も違って読めそうだ。
生死事大蓮は開いて仕舞けり   夏目漱石
最近、夏目漱石が読みなおされている。文豪俳句は、小説のように複雑だ。さてその「こころ」は?
          やんぬるかな!


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Posted on 2016/06/25 Sat. 09:50 [edit]

category: やんぬるかな

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遥照6月号 

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急ぐ蟻急がぬ蟻にもの申す    佐藤宗生
聖五月沖に未来のあると言ふ    花房柊林
白牡丹天と袂を分ち散る       甲斐梶朗
一笛に動く仕舞や松の芯       石津淡紅
その後の暮しは知らじ薔薇に風   中西八千代
楽しみは雲の観察今年竹       山崎靖子
独唱斉唱合唱夕蛙           竹地恵美
生涯の一句欲しかり牡丹散る     牧明子
新緑の城に災禍の跡あまた      古川澄子
水の面に風湧きやすし水馬      森脇八重
山藤や母の面差し地藏尊       原房枝
山間の風ふり分ける鯉幟        森靖子
列を成すボランティアの眼風五月   土屋鋭喜
独り居の退治話の大百足        久戸瀬孝子
めいめいに幼な籠持つ苺狩       石井弘子
トンネルを抜け一面の余花に会ふ   柚木寿代
バーボンのグラスに憂ひあぢさゐ花  山下卓郎
オカリナの音が揺らせる臥龍梅    中西登美
線路沿い午後の散歩の草いきれ    南みどり
対岸へ春を繋いで渡し舟        工藤泰子

Posted on 2016/06/03 Fri. 11:22 [edit]

category: 遙照

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