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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな50 

やんぬるかな50  工藤泰子

いよいよ「やんぬるかな」が50回となった。そろそろ「已めるかな?」そろそろ潮時?引き時?など思う時もあるが・・・・・。
  鴨引くや人生うしろふりむくな 鈴木真砂女 
明治39年(1906年)に千葉県鴨川市で生れ、2003年96歳で亡くなった女流俳人、鈴木真砂女の句である。最近テレビタレントや議員の不倫が週刊誌を騒がしているが、同じく道ならぬ恋に走った真砂女にも、世間の目は冷たかった。そんな真砂女を丹羽文雄は「天衣無縫」、瀬戸内寂聴は「いよよ華やぐ」の小説に書いている。
 「鴨引く」の季語は、「鳥帰る」「白鳥帰る」「引き鶴」「帰雁」など同様に、暖かくなると、北の生まれ故郷に帰る渡り鳥のことを言う。鴨には帰って行く場所がある。故郷を追われた自分の境遇を振り返るも、ふり切って「ふりむくな」と前向きな決意を示した。“鴨引く”は、地名の鴨川市?を重ねているのではない。
 真砂女の生家は海辺の老舗旅館「吉田屋」であった。諸事情で出戻り、女将をしている時に出会った妻子ある海軍士官との恋を次の様に詠んでいる。
  罪障のふかき寒紅濃かりけり
  羅(うすもの)や人悲します恋をして

 俳句では、真砂女は久保田万太郎の「春燈」に参加し、49歳で「生簀籠」を出版する。旅館業では火事に見舞われたが、再建を果たし、これからという時、前掲の様な俳句が喧伝され、経営権で揉め、病気療養中の夫と離縁、裸一貫で、飛び出すこととなった。31歳から海軍士官が病没するまでの約40年間も、二人の不安定な関係は続いた。
   蛍火や女の道をふみはずし
   すみれ野に罪あるごとく来て二人
   冴え返るすまじきものの中に恋
 
無一文だった真砂女だが、その人脈で、銀座一丁目の路地裏に小さな料理屋「卯波」の開店を果たした。資金は、丹羽文雄など大物の資金援助によるものだ。店の名前「卯波」は次の句より採った。
 あるときは船より高き卯浪かな
 句集は「①生簀籠」「②卯波」「③夏帯」「④夕蛍・俳人協会賞受賞」「⑤居待月」「⑥都鳥・読売文化賞受賞」、九二歳で出版した「⑦紫木蓮」では俳句界の最高賞「蛇笏賞」にかがやいている。
 銀座の「卯波」は、俳人、文人の溜り場として、多いに繁盛した。以前、雑誌で、店先に立つ真砂女の写真を見たことがある。何しろ、とびきりの美人であり、奔放な恋の句の名手である!しかしスキャンダラスな感じはなく、むしろ銀座での女将としてのプライドと自信に溢れていた。次の様な日常詠にも、恋の残像を見るのは、私だけだろうか?
  水打って路地には路地の仁義あり
 秋刀魚焼く煙りの中の割烹着
 降る雪やここに酒売る灯をかかげ
 鮟鱇の吊し切とはいたましや
 今生の今が倖せ衣被(かつぎ)
 鯛は美のおこぜは醜の寒さかな

先日“劇団こすもす”の第十七回公演「真砂女」が、金光公民館で上演された。32年も続いている劇団なのだそうだ。「わがパパママ奮闘記」や「妻と社長と九ちゃん」などが最近の公演である。
パンフレットによると、今回、主演の真砂女役と演出をされた山田代子さんは、仲間たちと真砂女関係のエッセイや句集を読み、理解を深めて来たそうだ。
その仲間の一人に「遥照」の土屋鋭喜さんがいる。彼の役は、吉田屋の番頭で、五十から七十歳までを演じた。まず客席後方から、ハンドバッグを振りながらドンドン行く真砂女の後を、たくさんの荷物を抱えながら追いかける土屋さん(番頭)が出現するや、場内はどっと沸いた。その他も頼りになる番頭役を上手くこなしていた。
公演に先がけ、メンバーは鴨川・九十九里浜・銀座などを廻る研修旅行をし、真砂女の息吹に触れることができたそうだ。
 秋天を褒めて船頭国訛り     土屋鋭喜
 九十九里少女見つめる沖の秋      〃
 
 冴ゆる朝真砂女となりて板に立つ 山田代子 
 喝采のスポットライト春立てり    鋭喜
  
金光公民館は初日の公演であった。演じる人の昂りも伝わって来て、生の舞台の醍醐味があった。
「感動した!泣いた!」などの感想が洩れていた。岡山での残りの2つの公演は、より熟達したものになるだろう。演劇に魅せられ、演目を深め、台本を読み込み、稽古を積んで「板に立つ」という決意、意欲が、詠まれた俳句に見てとれる。山田代子さんは真砂女に成り切ったのだと思った。俳句にも演劇にも出会えたすばらしい公演だった。
水打ってそれからおかみの貌になる
瓜揉んでさしていのちの惜しからず
夏帯やおのれ抑ふることに馴れ


〈前回のお詫び〉インターネット検索の住所?が抜けていました。http(ハイパーテキスト伝達)です。そのリンク先「俳句界・テレビ」は、  http://haikukai/tv 是非検索して俳人の書斎を覗いて欲しい。

  菜の花や今日を装ふ縞を着て  真砂女
  片栗の花を見にゆく帯しめて   〃
  
 
       
         やんぬるかな!
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Posted on 2016/02/29 Mon. 13:01 [edit]

category: やんぬるかな

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滑稽俳句NO90 今月の特選句 

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 春うごくボンと光つて写真館  工藤泰子
「ハトが出ますよ~」ボン。昔は写真の照明にマグシウムを焚いたが、ストロボの登場で引退となった。「卒業の写真を撮られ目がチカチカ」。

Posted on 2016/02/26 Fri. 19:12 [edit]

category: 俳句

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遥照2月号(2016) 

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猫の恋日柄もなくてすべて吉   佐藤宗生
ふるさとの山は父なり大旦     花房柊林
それらしき物も混ざりし若菜籠   甲斐梶朗
初風や神官磴を駆けのぼり    石津淡紅
志あるかに見ゆる冬木の芽    中西八千代
両の手で温めやりたや寒牡丹   川崎照女
雪掻きて掻きて往診医を待てり   山崎靖子
花八つ手八十路半ばを惑ひをり  竹地恵美
煮凝りや鍋の形を崩す箸      牧明子
蓬莱や今に残れる納屋梯子     森脇八重
戦争も知らぬ世代の成人式     古川澄子
青竹の音のはじけてとんど灰    森靖子
しばらくは吾も菩薩に初日の出   原房枝
成人の蝶ネクタイの成人日     土屋鋭喜
蠟梅の蕾こぼして生けらるる    久戸瀬孝子
転げ出て空より青し龍の玉     石井弘子
買初や母の衣の小さき寸       柚木寿代
何もかも丸くおさめて雑煮椀     徳永保美
吾のみ知る小川の汀芹を摘む   山下卓郎
今年こそ三猿と決めて年迎ふ   中西登美
そこかしこ鳥いたずらの実万両   浅野陽
枯蔦の輪廻転生煉瓦塀       工藤泰子

Posted on 2016/02/05 Fri. 16:06 [edit]

category: 遙照

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