10 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.» 12

空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな70 

☆やんぬるかな70  工藤泰子
前回は月の俳句を紹介した。月には魔力がある。
故人となった菊元虹雨(叔父・双子の兄)と菊元直也(父・弟)の句集をめくって月の俳句を抽出したが、俳句から肉声が聞こえるように思うのは、秋の夜長だったからかもしれない。
父がつけしわが名立子や月を仰ぐ  星野立子
虚子は2男6女の子福者だ。長男の年尾は「ホトトギス」を継承、その後も稲畑汀子→稲畑廣太郎と俳句界を牽引している。次男の池内友次郎は音楽家だが、
星野立子(次女)、高木晴子(5女)、上野章子(6女)は、それぞれ俳句の才能を発揮した。中でも、立子は、初の女性主宰誌「玉藻」を創刊・主宰し、同時期に活躍した女性俳人、中村汀女・橋本多佳子・三橋鷹女とともに四Tと称された。
   朴の葉の落ちをり朴の木はいづこ   立子
山本健吉は「朴の葉の」の句を評して、「ありふれた日常語の使用や、口語的な発想は、立子の句の一つの特徴をなすもので、虚子の句が持っている即興詩的側面を、立子は承けついでいると言えよう」と書いている。また、「彼女の句は、明るく、淡々として、軽く、また、のびのびとしていて、屈託がなく、素直な情感が盛られているのだが、その反面に、やはりあまりに他愛なくて物足りないという不満は、どうしようもないのだ。」とも評している。
大仏の冬日は山に移りけり      立子
大仏は鎌倉大仏だろう。温かい大仏に冬日の取り合わせが絶妙だ。「の」「は」「に」「けり」の使い方は、なめらかで、冬日まで流れていくような調べだ。
しんしんと寒さがたのし歩みゆく   立子 
天真爛漫なのか、強がりなのか。”寒さを楽し!”と言うのは、どうせ逃れられない寒さを逆手に取って、楽しんでしまえ!というしたたかさではないだろうか。人生の艱難辛苦?を乗り切るには、能天気と言われようとも目出度く、寿ぐ言葉で自分奮い立たすのだ。立子の俳句が愛されるのはこのためかと思う。
話は変わるが、岡山県文化連盟では、20ページもある写真入りの立派な冊子・総合プログラムを配布している。それは「第一五回おかやま県民文化祭」(9月~12月)の”アート、音楽、文芸などの様々なジャンルの発表/大会などのスケジュール”で「県民みんなが自己ベスト! 多様性と調和! 未来への継承!」がうたい文句だ。
俳句部門は、県レベルの「第22回岡山県現代俳人大会(15日・きらめきプラザ)」「第38回岡山県俳人協会俳句大会(22日・国際交流センター)」がある。
浅口市でも14日に「第十二回浅口市俳句大会」が開催された。浅口市は、三町が合併してできたので、大会は「鴨方」「寄島」「金光」の会場で、順番に廻るが、今回は金光の公民館なので、近くの金光教本部や門前町大谷を吟行し大会にのぞんだ。
この大会は、地方ならではの温かい会で、俳句経験者の市長や、俳句に造詣の深い教育長も必ず出席され、表彰状を手渡ししてもらえる。こんなにも俳句が地元にとけ込んでいるのはなかなか無いと思う。
30年近く、毎月発行の「遥照」(通巻333号)主宰、佐藤宗生先生の長年の取り組みのおかげである。
浅口の協会の会員と「遥照」の会員が選をした事前応募句の結果の三賞のみ紹介する。(約300句より)
  浅口市長賞
 咲きたくて散りたくて萩揺れており 南みどり
  浅口市教育長賞
 呆けてもいいではないか鰯雲    花房柊林
  文化連盟会長賞
 車椅子たびたび止まり秋拾う  光岡早苗
学生部門では、小・中学生に、夏休みの課題として、俳句が定着しておりブームの先駆けとして自慢できる。さて、予選通過した、約450句より選ばれたのは、
〈小学生の部・市長賞〉
色づくとてれてるみたいもみじのは  山本真央
夏がきた背伸びしている温度計   石田舜太
 じいちゃんのずしりと重いすいかかな 山下絢加
〈中学生の部・市長賞〉
グランドは私を焦がすトースター 中江美順
夏休みの宿題だから、仕方なしに作った俳句だとしても、自分探しができ、成長できたのではないだろうか。とにかく、五七五と指を折って呟けば名句の誕生だ。
表彰のあとは、当日句の互選が行われた。
今回は京都から「運河」同人・「鳳」主宰・浅井陽子さん、高松から若手俳人(新人賞を総なめ)の涼野海音さんも参加して賑わった。お二人は総合俳誌の「俳句」「俳壇」「俳句界」「俳句四季」など紙面を飾る有名俳人である。
大会賞には木の実の句が選ばれた。
   坐りたき石あり木の実打てばなほ 浅井陽子
   山々は高さ競はず雁渡し     涼野海音
さすがに大賞の句には、詩情が、物語がある。句跨りのリズムも新鮮だ。「坐りたき石あり」の切れに、「木の実打てばなほ」が畳みかける。「打てば」という音も、自然界からの便りに思えて、文句無しに好きな句だ。
私は、海音さんの雁渡しの句を特選に頂いた。「雁渡し」は、初秋に吹く北風(青北)のことだ。「雁渡る」と間違えそうだが、鳥をさすのではない。季語のかりがね、初雁、雁が音、雁の棹などは雁のことだ。
この句の「高さ競はず」の中7の山々は何処だろう。あえて深読みすれば、人生の山かもしれないと・・。さわやかな句柄は、魅力的だ。
さあ、山から里へ来る鳥も、北から来る鳥、南へ去る鳥もいて、秋は大賑わいだ。渡り鳥は秋の日本へ渡来し越冬するのだが、おびただしい鳥の群で来る。「鳥渡る」は秋、「鳥帰る」は春の季語だ。
塊がやがてたひらに鳥渡る   浅井陽子
色鳥やきらきらと降る山の雨  草間時彦
燕はやかへりて山河音もなし  加藤楸邨
鳥渡るこきこきこきと罐切れば 秋元不死男
 オノマトペで有名な句だ。拘留の経験のある作者にとって、こきこきと罐を切る時、金属の鈍い音が耳に残る。ぎざぎざに開いた罐の蓋・・「鳥渡る」は空への自由への思いだろうか。
        やんぬるかな!

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Posted on 2017/10/30 Mon. 08:04 [edit]

category: やんぬるかな

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30

やんぬるかな69 

やんぬるかな69  子供俳句
前回は、金子敦さんの五つの句集「猫」「砂糖壺」「冬夕焼」「乗船券」「音譜」を紹介した。さすが、カラオケ名人!絶対音感のある句集だ。
月を見るひとりは猫を見てをりぬ   金子敦
つぶあん派こしあん派ゐて月を待つ   〃

スイーツ王子らしい、好みも句になる。ちなみに王子はこしあん派だそうだ。
カネコさんと言うとネコ!月よりも猫が主役だ。
猫の尾のしなやかに月打ちにけり 金子 敦
秋の影ときをり猫の尾が動き   檜尾とき魚
 さて、「月」は秋の季語である。大気が澄み切って一番きれいに見えるからだ。月は地球をめぐる衛星で、27・3日で地球を一周し、太陽と地球の相対的な位置関係で満ち欠けをする。新月の月齢は0・0、満月はほぼ14・8である。
【月】新月・繊月・二日月・三日月・上弦の月・十日夜月・ 十三夜月・ 小望月・満月・ 十六夜・ 立待月・居待月・ 寝待月・臥待月・更待月・下弦の月・有明月・三十日月・・・
  月天心貧しき町を通りけり     蕪村
  こんなよい月を一人で見て寝る   尾崎放哉
  月光のつきぬけてくる樹の匂い   桂信子
  土笛を吹いて風土記の月迎ふ    菊元直也

【十五夜】旧暦八月十五日の満月の夜、良夜といい、秋の月の中でも特に美しい。名月、今日の月
  けふの月長いすすきを活けにけり  阿波野青畝
  迷ひ来し猫を良夜にかへしけり   菊元虹雨

【無月】名月が雲におおわれて見えない、雨だと雨月
  草踏んで獣通りし無月かな     廣瀬直人
【十六夜】旧暦八月一六日の夜、または月のこと
  十六夜湖のかぎりをさざなみす   野沢節子
  十六夜の出先へかかる電話かな  鈴木真砂女

【十三夜】旧暦九月十三日の夜で、名月の一か月後なので、後の月と言う。栗名月、豆名月とも呼ばれる
  くくくくと鳥昇りゆく後の月     石寒太
  
秋はまた文化の月、10月には、第15回岡山県民文化祭の地域フェスティバル「あさくち文化祭」が、開かれる。
浅口市は、平成18年、金光町、鴨方町、寄島町が合併して誕生した。「キラリと光る未来そうぞうワクワク都市」を目指している。市の木が「桜」、魚は「牡蠣(かき)」、星は「シリウス」とは、最近知った。浅口市健康福祉センターの多目的ホールの名前が「シリウス」なので、不思議に思っていたが、全天の中でも一番明るい「シリウス」を名乗るのは、この町が、天文台の町だから当然ではあった。
余談だが、俳句では、山口誓子が西東三鬼・橋本多佳子らと創刊した「天狼」はシリウスのことだ。
  墳山(つかやま)の天狼父にまぎれなし   角川春樹
 合併して出来た市だから、文化祭の会場も鴨方、金光、寄島に分散される。【浅口市総合文化祭―文化がまちに出る!地域いきいきプロジェクトin浅口―】
今年度の浅口市俳句大会は、14日に、他に先駆けて金光の会場で開催される。展示は書道、絵画、水墨画、陶芸、生け花、写真などの傑作、力作が3つの会場で21日から発表される。バラバラの会場を巡ってもらう為なのか、子供のスタンプラリーが目玉企画だ。“才能発見の旅に出よう!”の掛け声で「こども体験コーナー」を設け、参加賞の図書カードは、2つ以上の会場で、2つ以上のスタンプを集め、アンケート2問に答えるとゲットできる。
我ら「遥照」でも、21日(鴨方)、28日(寄島)で、コーナーを開設するので、是非遊びに来て欲しい。
いざ「俳句」を説明するとなると、なかなか難しい。
【ルールは「五・七・五」の十七音で「季語」が一つ入っている。】だが、季語は旧暦なので、馴染みにくい。とりあえず「歳時記」の中から、分野別に分りやすくピックアップする必要があろう。
今回、ネットで富山大学付属小学校教諭・前田正秀さんの記事「小学生の俳句がおもしろい!」を見つけたので、少し紹介したい。
俳句の魅力、俳句の指導などの項目も為になるが、“リズムを味わう”“俳句を音読する!”ことの指摘がなかなか新しいと思ったので、見てみよう。     
【俳句には、自然に体でリズムを感じたくなる心地よいリズムがあるのである。俳句の七五調のリズムを、音楽でいう「8(エイト)ビート」だと捉え、体感する。】

 【例えば、「古池や蛙飛び込む水の音」 を音読する。大抵の人は「古池や」と言った後、無意識のうちに3泊の休符を入れるのではないだろうか。
 5文字と3拍の休符で、合わせて8ビート。この8ビートのリズムが、日本人にぴったり合うのである。だから、私は子供に指導する際、多少の字余りや字足らずにこだわらない。】
「分かる」のと「できる」のは違う。「自分だけの発見」のある俳句をと、試行錯誤して、穴埋め問題で遊ぶ時間を設けたそうだ。
    そこで問題Q
(     )くるりとパーマをかけている
( )の中に言葉を入れてみる。
「お父さん」「お母さん」と入れるようでは30点。
当たり前でつまらない。ライオンが などと動物を入れるようなら80点。ちなみに、この俳句は、全国学生俳句大会の入賞作品で、( )の中に入っていた言葉は、「ブロッコリー」である。クラスで出てきた傑作の答えは、「わらびがね」だったそうだ。
   さて、次の問題Q  子供の感性に脱帽する答は・・・(後ろ)
①雪だるま(     )をつけてお友だち
②秋の夜(     ) 笛をふく
③夏休み たいくつそうな(     ) 
④先生になりたがる(     )夏休み
⑤かしわもち 弟三つ 姉(     )
正解例①名前②しょうじの穴③ランドセル④母⑤一つ
 そこで、前田先生の真似をして、秋の果物の名句クイズを作ってみた。イ~ホより選択
①(  )くへば鐘が鳴るなり法隆寺  正岡子規
②星空へ店より(  )あふれをり   橋本多佳子
③(  )食ふ一語一語の如くにて   中村草田男
④海に会えばたちまち青き( )剥きたり 金子兜太
⑤父といふしづけさにゐて( )割る  上田五千石
  イ梨 ロ胡桃 ハ林檎 ニ柿 ホ葡萄  
 
  父がつけしわが名立子や月を仰ぐ  星野立子
  たのしさや草の錦といふ言葉    〃
  子の摘める秋七草の茎短か     〃
   
 星野立子は、高濱虚子の次女、初の女性主宰誌「玉藻」を創刊・ 主宰した。自由な発想が魅力だ。
子供の心で柔軟に俳句を楽しみたいものだ。
                やんぬるかな!

 

Posted on 2017/09/21 Thu. 09:46 [edit]

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21

やんぬるかな68 

やんぬるかな68  工藤泰子
前回は、金子敦さんの第五句集「音譜」から、次の句を紹介した。
噴水はまこと大きな感嘆符  金子敦
 FB(フェイスブック)では、猫好き俳人?の括りで交流がある。(金子すずちゃん&工藤空・工藤海・・)
さて、「感嘆符!」と言ってのけた「噴水」は他の句集では、こう語られた。
待ち人は来ず噴水は繰り返す 敦
噴水の音と重なるわが鼓動  〃
以前、山陽新聞のコラム「滴一滴」に彼の次の句を発見し、すぐにお知らせしたが、もちろんすでにご存知であった。さすがスイーツ王子だけあって甘い仕立ての作品だ。カラフルなマーブルチョコと夏休みの取り合わせは実に楽しく、どの子にもキラキラした一日が、次々と箱から飛び出してくるようだ。
夏休みマーブルチョコの赤青黄 句集「冬夕焼」  
プロフィール;金子 敦(かねこ あつし)1959年、横浜市生まれ。未来塾俳句教室講師。「出航」会員。句集『猫』『砂糖壺(第11回 俳壇賞受賞)』『冬夕焼』『乗船券』『音譜』 好きなもの・猫、スイーツ、漫画、カラオケ、書道、百均、その他いろいろ。
「ラスカル」「あっちゃん」の呼び名で、抜群な人気!もちろん俳誌でも、有名な俳人である。その人脈も、杉山久子さん、鈴木茂雄さんなど多彩で、チャットを垣間見ていると、俳句界の「今!」を体感できる。
 句集は手に入らないので、鈴木さんや他の人の評論から、5つの句集を、覗き見させてもらった。
 第1句集「猫」
 ボールペンの先端は球鳥渡る
 折紙の裏は真つ白昼寝覚
 方眼紙にみづいろの罫小鳥来る
 朝蟬や練乳缶に穴二つ
蝉の穴と練乳缶の穴!穴の一つは空気穴である。どの句も好奇心の強い猫のような発見に驚く。
第2句集「砂糖壺」
鈴木茂雄さんの評によると、句集のタイトルは第11回俳壇賞受賞の作品「砂糖壷のなかに小さき春の山」に由来しているそうだ。ここでは、「夕焼」の作品を3つ選んだ。今まで、何気なく見ていた“夕焼”が、とてつもなく不思議なものに思える。太陽が沈む頃、青色光は拡散され、波長の長い赤色光だけが、地上に到達するために起る現象なのだ。闇の始まる前に!
夕焼や蹴るには大き過ぎる石
夕焼やきのふのやうな少年期
夕焼のはみ出してゐる水たまり
 これらは“夕焼”との関係で必然性を持つことになった。どの句を見ても、口調はやさしいのに、いつのまにか深く、核心まで導かれてしまう。これこそは新しい俳句の方向性ではないかと感じ入った。
いい人と言はれて淋し水中花
月白や手紙のやうにガム渡す
蜻蛉の風をほどいてゆきにけり
CLOSEの木札かたんと鳥渡る
戻り来し猫の足拭く十三夜
 さて猫好き作家の猫ぎみ!十三夜の季語が絶妙だ。足拭く・・これも多くを想像させた。
第3句集「冬夕焼」
   吸飲みに残りし水や冬夕焼
「2006年、金子さんのご母堂が逝去された。この作品はその遺品のひとつを詠んだものである。巧みな心象風景の句であるが、ここには小手先の技巧は微塵も感じられない。こころの奥底から出たはだかの言葉だからである。(栞・鈴木茂雄)」
   永遠に消えない虹を分かちあふ
   少年の吾に呼ばるる草いきれ
   大いなる花野の果ての無人駅
第4句集「乗船券」
   月の舟の乗船券を渡さるる
 いったいどんな「乗船券」なのか?
「月光のかけらのやうな竹落葉」という句や次の句も気になるところだ。
   望の夜や母の遺影を窓に置き
   満月の向かう側より呼ばれけり
天上の母が落とせし木の実とも
 この句集の評は、故澤田和哉さんの(敢て彼が言うところの)「誤訳『乗船券』」を紹介したい。
実は4年前、澤田さんとは、与謝蕪村顕彰の表彰を受けた時、受賞した人たちと一緒にカレーライスを食べた、という、浅からぬ縁があった。
とりあえず、二人の作品だけを紹介しよう。
     京都府知事賞
はんざきの口水平にあいてをり  工藤泰子
     宇多喜代子賞
豚肉のぷるぷるしたる大暑かな  澤田和弥
二年前のこと、若手俳人として活躍されていた澤田さんの訃報をFBで知った。それで、「誤読」という評論があることも判った。彼は言う。
【「乗船券」は「死」の世界の切符ではあるまいか】
この強い言葉には、彼のダイイングメッセージも込められていたのだったのではないか。
さあ、そこは払拭し、新しい夜明けを見つけよう。
「新涼や帆船の絵の切手貼り 敦」!

 さて、最新のフランス堂から出版された第5句集も、人気だそうだ。さすがにプロ顔負けのカラオケ名人は、句集「音譜」にその要素をぎっしり盛り込んでいる。「音譜!」と「言葉!」を繋ぐものは?五線譜と五七五の出会いを楽しもう。
 噴水の高低、緩急、リズムを思い出そう。夕焼の移り行く色を思い出そう。音と調べのドラマを・・。
第5句集「音譜」
白南風や楽譜に大きフォルティシモ
 ハーモニカにあまたの窓や若葉風
 シンバルの連打のやうな残暑かな
 十二月八日やシュレッダーの音
 春を待つ八分音符に小さき羽
 トランペットより薫風の生まれけり
 ティンパニを叩けば風の光り出す
 楽団の荷に弾みたる木の実かな
 葱提げてピアノ奏者の帰りけり
 るるるるとららららららと萩こぼる
 これらの敦ワールドで“ぷにょぷにょ”に癒された後は、月のBGMを聞きながら、猫と過そう。
  猫の尾のしなやかに月打ちにけり  敦
「猫俳句パラダイス」より
  月を見るひとりは猫を見てをりぬ  敦
さすがに、月と猫は切り離せない。
  
            やんぬるかな!

Posted on 2017/08/24 Thu. 10:55 [edit]

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24

やんぬるかな67 

やんぬるかな67     
一枚も山田荒らさずほととぎす 茨木和生
前回は時鳥の句を紹介した。先月の兼題の鑑賞をさせてもらったが、次の句について書いた。
陶芸の峡の煙突ほととぎす  石津淡紅
最近、陶芸を始めたので、陶芸の峡とほととぎすの取り合わせに惹かれたのだ。「陶芸の里、峡は、たいがい山の中にある。その土地の土がその陶土となるからだ。燻された煙突と深い緑の森の大自然を、ほととぎすがほしいままにしている。」と書いた。作者は後で判ったのだが、やはりこの峡は岡山の南東部の備前だろう。
日本の都道府県のシンボルに「県花」・「県鳥」が 郷土を代表するものとして選定されている。新潟なら、「チューリップ」と「鴇(とき)」、兵庫は、「ノジギク」と「鸛(こうのとり)」などが有名だ。岡山は「桃の花」と「雉」である。以前は「時鳥」だったのだが、94年から「きじ」に変更された。理由はホトトギスの托卵性の習性からくるイメージや、親近感が薄いことなどの意見があったとのこと。桃太郎伝説の国には「桃の花」と「お供の雉」は確かにぴったりだ。
托卵とは=ブラッド・パラサイト。郭公や時鳥など、自分で抱卵や育雛を行わず、他の種(宿主)の巣に卵を産みつけて、育ててもらうことをいう。托卵された卵は他の雛より早く孵化し、他の卵を巣の外に押し出す。産まれつきそのプログラムが組み込んであるとは・・驚きだ。タイムリミットは、他の雛が孵る三日以内。一羽になった雛は、仮親の庇護を独占して大きく育つ。ビデオで見たが、俄かに信じがたかった。
さて、正岡子規の雅号は「子規」つまりホトトギスの異称である。結核を病み喀血した自分自身を、血を吐くまで鳴くと言われるホトトギスに喩えたものだ。
喀血をした22歳(明治22年)の時、「子規」を名乗り、31歳で、高濱虚子に句誌「ホトトギス」の編集を命じている。自然をありのままに客観的に詠み出す「写生」の説を立て俳句の新時代を築いた。
明易や花鳥諷詠南無阿弥陀  高濱虚子
誰が為に花鳥諷詠時鳥    京極杞陽
 
さて世界短小詩の俳句の中心は季語!そして、言いたいことは欲張らずに、一つに絞る!
芭蕉の「笈(おい)の小文(こぶみ)」に
「西行の和歌における、宗祇の連歌における、雪舟の絵における、利休の茶における、其貫通する物は一(いつ)なり」とある。
水墨画も、白い空間があってこそ、墨絵の部分が引き締まる。性能の良いカメラが普及して、誰でも撮れそうな“写真”だが、構図や切り取る感性で、違いが出る。目に映ったものを絞り込み、引き算をする。瞬間を切り取るのも俳句と同じだ。
「描かざる美、いわざる美」それが日本の美意識!「いいおほせて何かある・芭蕉」と言うわけだ。

 もう一つ、大事なことが、「切れ!」。表に出さず、感動をせきとめて切る。言葉にあらわれているのは氷山の一角・・十七文字の不自由な型を逆手に取って切れを使えば、想像の余地が増える。不自由に思える型に慣れれば、楽しく遊べるようになる。人間はホモ・サピエンス(知恵の人)であり、ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)なのだから。
 いよいよ桃の季節の到来だ。岡山の白桃ぐらい美味いものはない。その昔、是非にと頼まれて、竹籠に入った白桃を、岡山駅で、買い求め、東京の親戚へのお土産にしたことがある(車内販売?)。東京弁では果物のことを水菓子と言っていたが、桃はまさしく「水菓子」だった。
 そこで今回は桃の句を選んでみた。
 中年や遠くみのれる夜の桃    西東三鬼
桃の種桃に隠れむまあだだよ   中原道夫

(この後、結社「銀化」立ち上げる)
缶詰の桃冷ゆるまで待てぬとは  池田澄子(摂津幸彦への追悼句)
 洗はれし白桃水を拒みをり   朝妻力  今年度の岡山県俳人協会俳句大会のゲスト選者)
「桃」は異世界と、この世を結ぶ不思議な果実である。
中国の崑崙山(こんろんさん)にすむという仙女、西王母(さいおうぼ)が育てる桃の霊力にあやかっている。この仙女の桃(三千年に一度開花し、三千年に一度しか実をつけない)を食べると、不老不死になるそうだ。最近、奈良県桜井市の纏向遺跡で、2千個にも及ぶ桃の種が大量に発見され、卑弥呼の墓!と騒がれ「邪馬台国大和畿内説」が元気づいた。明らかではないが、桃は祭祀に使用していたのだ・・と!桃には霊力がある。桃の節句、桃酒、桃太郎の鬼退治・・。
西東三鬼の「桃」は現代の桃源郷?

「遥照」では、すっかりお馴染みの四国の若手俳人涼野海音さんの快挙の知らせが届いた。「俳句」七月号で佐藤文香・中山奈々・黒岩徳将・堀下翔さん等と、若手29名の競詠にも選ばれている。
祝「第5回俳句四季新人賞」
 「天へ発つ」涼野海音  (30句より)
屋上に一人のバレンタインデー
踏青のみな太宰より若きかな
滝水のひかりが胸に移りたる
日輪のかすかに暗し青芒
起し絵の幼帝に日の差しにけり
箱庭の真ん中に置く一樹かな
読初の銀河鉄道天へ発つ

「前所属結社の「火星」「草蔵」では、客観写生を叩きこまれてきたが、これは私の俳句の方向性だと確信している。季語の現場に出て、しっかりと物を見て、自らの実感を重視し具象的に詠む。これが私の目指してきた俳句である。海音」
  新人賞奨励賞からも一部・・
「交信」 鈴木加成太
嘘なべて恋とかかはる日永かな
扇風機つけてポラリスとの交信
鳴らすたびギターが思ひ出すキャンプ

新鮮な俳句がいろいろ出てきたが、FB(フェイスブック)で交流のある金子敦さんを紹介しよう。
※1959年生まれ「砂糖壷」にて第11回俳壇賞受賞・・俳句会のスイーツ王子としても有名だ。
さざなみの形に残る桃の皮   金子敦
無花果の中に微細な星あまた    〃 
夏休みマーブルチョコの赤青黄   〃  

少年のような感性、やわらかく、やさしいタッチの俳句が魅力的だ。“猫大好き俳人”として始まったお付き合いだが、猫のようなスタンスに癒されている。
第5句集「音譜」から
ボンカレーの看板錆びて花カンナ  金子敦    
噴水はまこと大きな感嘆符      〃

つぎつぎ音楽の様に、生みだされる噴水と俳句が・・・・ああ感嘆符!
             やんぬるかな!

Posted on 2017/07/23 Sun. 07:50 [edit]

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やんぬるかな66 

やんぬるかな66  工藤泰子
爛々と昼の星見え菌生え    虚子
前回は、人類学者の中沢新一氏と小澤實氏の対談集「俳句の海に潜る」から、アニミズム俳句として、芭蕉、山口誓子の句などを紹介した。小澤氏は、虚子のこの句をアニミズム俳句と証し、次の様に評した。
「昼の星のスピリットと菌を流れるスピリットが、相互貫入を起こし染み込み合っているのを感じる」
季語の菌(キノコ)は秋!山本健吉の解釈に、「空に大白星(金星)、地には紅天狗茸か月夜茸・・・・抽象的絵画のよう」と言う説、一方「輝いているのは、実は”昼の星”ではなくて、作者自身の眼光なのである」という説があり迷うところだ。もし、現実なら、虚子に当日見える可能性のあった星としては土星しか考えられないらしいが・・。
さて「遥照」の誌名の由来が、本の裏表紙に書いてある。1960年、遥照山の嶺続きの西の山頂(竹林寺跡地)に晴れの国にふさわしい国立天文台=岡山天体物理観測所(東京大学東京天文台の付属施設)が開設された。
開所当時、188cmの反射望遠鏡は日本一の大きさだったが、ハワイのすばる望遠鏡(口径8.2m)、兵庫県のなゆた望遠鏡(口径2m)にトップの座を明け渡してしまった。これらは単一鏡である。ちなみに、世界一のグラハム山国際天文台(アリゾナ)は11・9mだが、2×単一鏡である。
この度、隣接の地に開設される「京都大学天文台ドーム」の完成が間近となった。
「夢の天文台・宇宙一の天文台」「宇宙人を最初に見つけよう!」「第二の地球探し!」などと、広報活動も盛んだ。PR動画を見ると、国内最大3・8mの新技術天体望遠鏡で、18枚の分割鏡を並べ、直径、3・8mの一枚の鏡にするものと謳われている。見た目は蜂の巣やジャングルジムのようだ。浅口市は「天文台のまち、あさぐち」として岡山天文台博物館のプラネタリウム改修、展望デッキの整備をし、万全の態勢だ。これが観光の目玉になってくれることは間違いない。マスコットキャラクターの“ドームくん”の胸元には、大きな星が輝いている。

天文台や宇宙のマクロな話も良いが、望遠鏡の世界から顕微鏡!ミクロの世界に眼を向けよう!
それは、どこにでもある「苔」の世界だ。
以前、金光町の植木祭の講習で、「苔玉」作りをした。植物の根を土で包み、その周りをハイゴケやスナゴケで、固定する。箱庭のような小宇宙が出現し、癒しの空間となる。
「苔」は草花や樹木と比べると、体の作りはとてもシンプルで原始的、植物の祖先に近い存在で、実に変わった生き物だ。地球に苔の祖先があらわれたのはおよそ4億二千万年前。恐竜より前のことだが、はるか昔から現在まで、ほとんど姿を変えていない。「苔」は苔類、蘚類、ツノゴケ類、地衣類などに分類されるものの総称で、日本には、千八百種、世界には約一万8千種もある。
繁殖は、体の一部からでも芽生えることができる。無性芽といって、瘤や髭,円盤のようなものを付けたり、ばらまいて殖やす。まるでアニメやSFに出て来そうな、未知の生き物のようだ。乾燥しても、死んだふりをして、チャンスがあればすぐに繁殖する。ミステリアスなミクロの世界がある。
苔の花と呼ばれるものは、これらの苔類から立ち上がる生殖器官で、正確には花ではない。苔類では雌器床、雄器床がそれであり、蘚類や地衣類は胞子嚢がそれである。白い兎が飛ぶような「うさぎ苔」をもらったのでルーペで観察して喜んでいたが、アンテナの様な突起は花ではなかったのだ。貴重な種類だったのに、翌年には出て来なかった。
さて、夏の季語「苔の花」もこれを踏まえて見ると面白い。深い森や古い寺のイメージが付き物だが、「苔の花」の句をいくつか紹介しよう。
父母よりも古る兄の墓苔の花  山田弘子
鏡石にも老斑や苔の花     鷹羽狩行
水打てば沈むが如し苔の花    高浜虚子
豪商の裔は住まはず苔の花    中村三千年
水かけて明るくしたり苔の花   乙二
 仏ともただの石とも苔の花   森本林生
尼老いぬ日の澄みに苔花ひらき  長谷川双魚
香もそれも寂光院や苔の花    飴山實


話は変わるが、なかなか聞くことができない鳥の声に「ほととぎす」がある。音が出る機能のある、電子辞書で聞いてみたが、本物は久しく聞いたことがない。絶滅危惧種になるのではと心配になる。
そんな時、「深海」69号の「楸邨俳句を読む46」を読んでなるほど納得した。
ほととぎす人間こゑを断ちにけり 加藤楸邨
中村正幸主宰(楸邨の直系)の文章は、いつも示唆に溢れている。有名な次の句との比較も的確だ。
谺して山ほととぎすほしいまま 杉田久女
【大自然をほしいままに独り占めするほととぎすの圧倒的な力を見事に描いて入る・・】
楸邨のそれは、【人間探究派らしく、強く人間を自分に引きつけて描いている。「ほととぎすの声を愛でるために声を発するのをやめたというのが事実であるが、「人間」という言葉を使い、「こゑを断ちにけり」という強い言葉を使っていることに楸邨の内面の強い思いを感じる】【ほととぎすの必死の生に対するには、人間として対峙しなければならないとの思いからである】【「声を断つ」のは、命をかける程の決意で聞いているぞとの思いである。】
因みに「やんぬるかな64」で紹介した
「寒雷山脈」=青柳志解樹・今井聖・金子兜太・森澄雄・中村正幸・矢島渚男・・・、
「沖水脈」=鈴木鷹夫・中原道夫・正木ゆう子・・等の系譜は念頭に入れておきたい。
時鳥の聞き倣(な)しは、「テッペンカケタカ」「東京特許許可局」だ。一度だけ、運河の吟行で聴くことができたのは、僥倖だった。
寺に来し甲斐ありとせば時鳥   茨木和生
一枚も山田荒らさずほととぎす    〃

桜」を「滝」を「山」を守る!「自然を守る活動」を推進している先生の句である。
やんぬるかな!

Posted on 2017/06/29 Thu. 12:40 [edit]

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