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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな73 


やんぬるかな73  工藤泰子
俳人協会の大串章会長が新設した、第一回新鋭俳句賞が発表され、高松の涼野海音さんの「初旅」が準賞に選ばれた。大会や句会でお馴染みの海音さんの快挙を多いに喜びたい。
父の日の切り岸を石落ちゆけり  海音
ゆふぐれの一木と春惜しみけり   〃
いまさらだが、海音さんの受賞歴を挙げておこう。石田波郷新人賞・星野立子新人賞・北斗賞・俳句四季新人賞と、あらゆる新人賞を受賞している。まだ取っていないのが、俳句協会新人賞だったのだが、この度めでたく新鋭賞の準賞受賞を果たした。
インターネットの「増殖する俳句歳時記」に、次の句がある。句集「一番線」より藤嶋務さんが選んだものだ。この句に何を見つけたのだろうか?
金色の鳥の絵のあり冬館   涼野海音
【金色の鳥とは何だろう。またいかなる佇まいの館なのだろう。二つの具体的提示もそれから先は読者の想像に委ねられる。まず絵のある館は冬木立に囲まれてひっそりとしている。窓の外には落葉が積って、見通しの良い木立の間を小鳥たちが飛びかっている。私の想像は勝手に巡り階段途中に飾られた立派な額縁の絵画へ向かう。映画のシーンの残影かも知れぬ。さて金色の鳥が思い着かない。黒なら鴉で決まりだが金色となると。ヒワやオウムやアマサギは黄色に映るが金色ではない。頭の中が乱反射して鴉が絶滅危惧種になる事があるや否やなどと混乱の域に入った。心が空になった次の一瞬、ふっと手塚治虫の火の鳥が羽ばたいて心に収まった。(藤嶋務)】・・・以下略。
海音さんは、決して難しい言葉を使わない。まるで難解なパズルが整然と箱に納まる様に、おのおののパーツが絶妙に絡みあい、いつの間にか美しいハーモニーを生みだし、物語が成立している。
彼のFBでは、毎日の昼食のうどんがUPされ、ブログ「俳句魂」には、応募句の状況の報告がある。その応募数も読書量も膨大で、自慢をすればと思うが、「低テンションでブログ連載中」と、謙虚極まりない書き様だ。また、“スピカ”と言う俳句ウェブマガジン(江渡華子・神野紗希・野口る理の企画編集)の海音さんの俳句と文章を覗くと、カテゴリーは「平凡主義」とあった。敢て平凡主義!と言うからには・・検証してみなければいけない!
トンネルの上に墓あり百千鳥  海音
「やはり旅は鉄道。最短の時間で目的地に到着するより、各駅停車で車窓の風景をじっくり味わう方が好きです。名前を知らない山や川、田んぼや畦道など、無名の風景と対話しているうちに一句浮かびます。」
 卒業やガードレールの先は海  海音
「家の近くに学校があるせいか、卒業や入学の季節を意識してしまいます。学校の門からは賑やかな声がよく聞こえます。励ましたいのと同時にこちらが励まされるような声です。」
 これは、決して平凡ではない。トンネルと墓と百千鳥!卒業とガードレールと海!この絶妙な計算には、「予定調和」と言わせない非凡が隠されている。 
その海音さんの今現在の所属結社は「晨(しん)」である。先日、三岸節子の「花」の表紙の1月号(第203号)を贈呈して頂いた。「晨」は昭和59年に創刊された同人誌で、約140人の会員は、代表の大峯あきら・茨木和生・岩城久治・草深昌子・田島和夫・山本洋子先生など著名な俳人ばかりである。
草深昌子さんのブログから引用させてもらうと、
【創刊号は、梅原猛氏と大峯あきら氏の濃密な対談に頁を費やしている。詩と哲学について世界的規模で論じながら、ついには「俳句は自我の詩ではなく、存在の詩である」という大峯あきら氏の発言に至ると、梅原猛氏が「これはすばらしい第二芸術論以来の大理論やで」、と驚嘆される・・・】
「晨」とは、「太陽がふるいたってのぼるあさ。」と言う意味なので、その意味を強く感じた。
【「晨」は結社を横断するというか、結社とは別の原理を作りたいというものであった。タテとヨコとがうまく調和して働くなら、作家としての向上にプラスするところがあるのではないか。】とある。さすがに、作家も作品もすごい俳誌である。
『晨』の同人作品から一部を紹介する。
九天を飛ぶ正月の落葉あり    大峯あきら
竹馬のうしろ一輪車の弟     浅井陽子
柴栗や山の日差は苦にならず   茨木和生
元伊勢の杉雫して淑気満つ    岩城久治
秋風を鍵屋の辻に聞きにけり   小畑晴子
コスモスのための風かと思ふほど 杉田菜穂
曾良ほどは歩かず風の冬すみれ  涼野海音
ややゆれて水を離るる今日の月  田島和生
どちらからともなく寄れり露の玉 藤勢津子
人絶えて薄にぎにぎしくなれり  森井美知代
門を出て風に吹かれし子規忌かな 山本洋子

詠み物からは、「私の好きな季語⑫『左義長』髙松早基子」を紹介したい。以前、御所(ごせ)に住んでいる彼女に、役の行者の生誕地「吉祥草寺」を案内してもらったことがある。役の行者は、金剛山・葛城山で、修行を積み、大峰山を始めとする全国の修験の山を開いた修験者の開祖である。この地で、毎年1月14日に、一基一トンはある雌雄の左義長が組まれる。
崩れては火勢を増せる大とんど  髙松早基子
読経の渦の中、火勢に煽られ、とんどの輪が後退つていく。火勢が鎮まる頃、雌雄のとんどの間を火渡りりし、火縄にこの火を頂いて帰り、翌朝の小豆粥の火種とするのである。
金箔の剥がれとびたる吉書揚   茨木和生
髙松さんは、書道家なので、「書初めの書の上達を願ってとんどの火に投じるのだが、赤く燃えながら、夜空にゆらりと舞い揚がると、思わず手を合わせてしまう。」とあった。
初空、初星、初日、初明り、初東雲、初茜、初晴れ、初景色、初山河、初声そして「初旅」・・・
年よりも若いと言われ初麗   和生
           やんぬるかな!
 
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Posted on 2018/01/22 Mon. 14:10 [edit]

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やんぬるかな72 

☆やんぬるかな72  工藤泰子
前回は、第63回角川俳句大賞の句を紹介した。
今年の受賞は、ニューヨーク在住の月野ぽぽな(海程)さんの「人のかたち」であった。谷口智行さんの「秋津島」は、一位と同点(3点)にも関わらず、受賞には届かなかった。これまでの応募作品の、「薬喰」「西ようず」「森よ、」の底流を流れる世界は、どこへ行くのだろうか?「秋津島」は谷口さんの角川最後の挑戦だったそうだ。彼を理解するには、彼の句集や著書が手ほどきになる。以下、タイトルと帯文。
“豊穣の第一句集【藁嬶(わらかか)】”〈邑書林〉
土にまみれて働く熊野の「藁嬶」のような重みのある句集であるー茨木和生
 縫へと言ふ猟犬の腹裂けたるを
 盆の雨波止も男も湯気立てて
 冬ぬくし餅撒きとんと始まらず
“濃密な第二句集【媚薬(びやく)】”〈邑書林〉
今も熊野の地に繰り広げられている男の香(かざ)のする物語を体から出た言葉で紡いでいるー茨木和生
 目薬も媚薬も冷蔵庫にしまふ
 死者の辺へ十薬煮立てゐるかをり
 へばりつく少女はぎとる草相撲
【日の乱舞・物語の闇】〈邑書林〉
熊野二千年の光と闇を直視する先に熊野に生きる人々の素朴なる哀歓のつぶやきが聞こえる!
熊野のど真ん中で〈熊野〉を生きる著者が人間と神仏の混沌を語り尽す〈熊野学〉集成!
【熊野、魂の系譜】〈書肆アルス〉
”隠国熊野の表現者の聖地、シャングリラである。本書によってまた一歩、“魂の地”熊野が近くなった。”
歌びとたちに描かれた熊野と冠した三百頁にもなるこの本は、熊野曼荼羅とも言うべき世界だ。密林に迷い込むほどの文章の質と量に圧倒された。中でも、折口信夫(釋迢空)の「神は海からやってきた。」のマレビト信仰や、「水」に対する信仰が気になった。
「海から山へ、山から滝へ、川へ、山里へ、平野へ、そしてまた海へと巡る水。隔てられた神の世と人の世をつなぐ水・・・また大自然のすべての物に、神が宿ると信じられ、山、川、海、巨岩、巨木、動物、植物などに、自然現象では、火、雨、風、雷・・・・神を祀るいわゆる「祭」は、神と死者と生者の三者の交感の場であり、「踊り」は神や死者へのいとおしみの表現ということになろう。(跋文より)」
FBに彼の友人が描いた首に聴診器を掛けた「くまのん」のイラストが登場した。医者である彼だから、鈴ではないのだ。熊野の語り部「くまのん」の助けをかりたいものだが、私なりの【超訳】を試みた。
【国つ神その末裔として踊る  智行(秋津島)】
 国つ神とは天つ神に対して、日本の国土に土着する神。地神。踊る!盂蘭盆の前後に、年に一度この世に戻ってくる精霊を迎え、また送るのが、踊りだ。
死んでなるものかと踊りやめぬなり 智行(媚薬)
【風交じる雪か雪交じる風か 智行(秋津島)】
どちらであるかは、コロンブスの卵だが、どちらもなのである。神が交錯するところを詠んだ。
乳にほふ霙が雪に変はるとき 智行 「媚薬」
【木の股と根の国通じゐて涼し 智行 (秋津島)】
 ここでも熊野の語り部と、医者としての生命の考え方を伺うことができる。根の国とは、彼の世のことである。木の股は、生命の木が、分岐していくこと・。これは、紀伊の国の産んだ天才、南方熊楠の生命観と似ている。つまり宇宙はお互いに繋がっているのだと・・。涼し!とは、クリアー!と思った。
【まらうどに洪水吐きの夜滝見す 智行(秋津島)】
 まらうど、とは、客人(まろうど)のことだ。ここでは、土着の神でなく、その社会の外から来訪して、その土地にまつられた神を言うのではないか。著書『日の乱舞・物語の闇』の「うしお満つ」の中に、日本書紀の神武東征や熊野先住民のことが記されている。「神武東征記」では難波で長髄彦に敗れた東征軍が紀伊半島を迂回して熊野に上陸・・熊野先住民である「土蜘蛛」が行く手を塞いだが、八咫烏の先導によって大和への脱出に成功した。・・伝説が伝えるのは、熊野における縄文人すなわち先住民族と弥生人登場であるが次のように、締めくくられた。
「人間は変わっても、熊野・吉野の海や山河は変わらない。太古の地層が地下に眠っているように、僕たちの心の中には壮大なドラマの演じられた日本文化の古層が残っている」
洪水吐き・・この一度にどっと流れる滝、しかも夜の滝は、保水力を失った山河の悲鳴のように思えた。
滝壺を持たず千古を轟けり  智行 「媚薬」
時間てふ不思議なものを滝の前   佐滝幻太
【いかづちもをろちも霊(ち)なり秋津島 智行】
 ここでは、「ち」の音に注目しよう。千・父・血・乳・茅・日(にち)・家(うち)道・路・鉤・鈎・・地などがある。いかづちは、雷、神鳴りのことで、厳つ霊(いかずち)だ。おろちは大蛇でおは峰、ろは接尾語、「ち」は霊力、霊力のあるものの意味である。雲と大地の間の放電(いかづち)と生命体(大蛇)には「ち」がある秋津島、(大和国、日本国)なのだ! 
最後に土肥あき子さんの鑑賞文を紹介しておく。
神ときに草をよそほふ冬の月  谷口智行
漆黒の夜空に一点、うがたれたように光りをこぼす冬の月。あふれる月光はものの影を生むほどの明るさを持つ。月の光の下では草の葉や道端の小石、蛇口からふくらむしずくなど、どれも昼間には見えなかった美しさが備わる。「装う」とは外観を見せかけること。それは研ぎすまされた冬の月光によって、草や小石にそっと身を隠している神々の姿までも映し出してしまったかのようにも思われる。
さて俳人協会の大串章会長が新設した、第一回新鋭俳句賞が発表された。
なんと準賞には、高松の涼野海音さんの「初旅」が選ばれた。
父の日の切り岸を石落ちゆけり  海音
ゆふぐれの一木と春惜しみけり   〃
巧みな安定感が目立つと評された。新しい才能を見つける試みの先陣を切ったことを喜びたい。
         やんぬるかな!

Posted on 2017/12/15 Fri. 19:36 [edit]

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15

やんぬるかな71 

やんぬるかな71  
前回は、「鳥渡る」の句を紹介した。
鳥渡るこきこきこきと罐切れば 秋元不死男
 オノマトペのこきこきこきの句は、古希・古希・古希・・という音に絡めて、古希世代に特に人気だ。最近の缶詰めはパカッと開く仕組みなので、この音とぎざぎざの切り口は若い人には理解できないだろう。
  鳥渡るパカッパカツと・・では句にもならない。
さて、選挙と台風で、瀬戸大橋も通行止めになるような10月22日、第38回「岡山県俳人協会俳句大会」が、岡山の国際交流センターで開催された。そんな中でも、約100名が参加し、講師の朝妻力先生の「切れているのに繋がる……句形の不思議」の講演を聞くことができた。先生には関西にいた頃、何度か吟行や大会でお目にかかったことがある。今現在は「雲の峰」の主宰をされ、「俳句雑誌」にも度々登場されている。
講演は、やんわりと軽妙な語り口から始まったが、基本の基の文法に、ビシッ、バシッと切りこんで来られる。普段は「文法なんて!」と苦手を決め込んでいたが、レジュメが進むにつれて、どれも納得するばかりだ。そこで、本題の「・・句形の不思議」に辿りつくまで、乱暴な紹介にはなるが、例句も一つだけに絞って句形の不思議に迫り・・講演の一部を紹介させていただくことにした。(以下・・講演の抜粋)
【句形 切るか繋ぐかによってきまる。】
〈切るか繋ぐかは言葉の使い方によって決まる〉
言葉の使い方は文法の支配下にある。詩情は文法に優先すると公言するむきもある……。正しく表現されていない文からどんな詩情を感じることが出来るのだろうか?そもそも、文法を越える詩情というのは存在するのであろうか→少なくとも自分たちの作品は正しく表現したい……。句形を整えるということは正しく正しく表現するということに他ならない!
つながる1 助詞・活用語の接続活用
くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 蛇笏
(助詞、動詞・助動詞の連用形)
つながる2 助詞の省略
くろがねの秋の風鈴▽鳴りにけり 「が」を省略

切れる  切れは断点。句読点の句点。
① 活用語が終止形をとったとき
水洟や鼻の先だけ暮れ残る 龍之介
(動詞の終止形)
②終止の役割をもつ助詞を使ったとき
流れゆく大根の葉の速さかな 虚子 (終助詞)
③体言に、続くべき助詞等の搗かないとき
柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺 子規
          (など全ての体言)
④文体がかかり結びの形をとったとき
雪はげし書き遺すこと何ぞ多き 多佳子
(ぞ~連体形)
句形と切れ1「一句一章」
一句の句は句文の数。句点の数。一章は一つの俳句。
摩天楼より新緑がパセリほど 狩行(述語省略)
句形と切れ2「二句一章」
算術の少年しのび泣けり。夏。 三鬼
(二物衝撃・取合せ)
 ここで、いよいよ本日の本命!
切れているのにつながる
芭蕉の句を取り上げ句形と句意を解説・・
石山の石より白し。秋の風。
石山の石より白し 何が白い?文として未完結
→句形が二句一章なのに句意は一句一章→補完関係
**二句一章の一方の文節に主語や目的語がなく、他方が主語や述語や目的語となりうる文節であると、二つの文節が結びつき、一つの意味をなした俳句となる。
 その他にも、三段切れ、三句一章、などの超難解な文法の解明もあり多いに勉強になった。とりあえず、正しく正しく表現することを肝に銘じたい。
     ###
 今年も十一月の「俳句」誌上に「第63回角川俳句大賞」の発表があった。600編の中から、38篇が予選を通過した。通過作品の一覧表には、仁平勝、正木ゆう子、小澤實、岸本尚毅さん四人の選考委員の得票結果の◎と○が付いている。今年の受賞は、ニューヨーク在住の月野ぽぽな(海程)さんの「人のかたち」に決まった。ちなみに涼野海音さんも38編に残っていた。
今回次点の谷口智行さんは、一位と同点(3点)にも関わらず、受賞には届かなかった。これまでも、「薬喰」「西ようず」「森よ、」と順調に候補作品に選ばれていたのに・・残念でたまらない。表現者として脈々と流れる世界は「秋津島」へと到達した。これが、角川最後の挑戦と、聞いている。
角川俳句賞・受賞作品 (50句から、一部)
「人のかたち」  月野ぽぽな
母の日の晴れ間へと母さそいだす
花よりも大きく蓮青葉ひらく
もてあます葡萄ひとつぶほどの鬱
まばたきで仕上げる春の付け睫毛
うっとりと血液めぐる花の昼
   
 「秋津島」 谷口智行
国つ神その末裔として踊る
風交じる雪か雪交じる風か
木の股と根の国通じゐて涼し
まらうどに洪水吐きの夜滝見す
いかづちもをろちも霊(ち)なり秋津島

 秋津島の「しま」は「国」と同義で、大和国の異名、日本国の異称である。50句の中に、自然からの啓示が明かされているように感じるのは、私だけだろうか・・
      やんぬるかな!







Posted on 2017/11/25 Sat. 10:45 [edit]

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25

やんぬるかな70 

☆やんぬるかな70  工藤泰子
前回は月の俳句を紹介した。月には魔力がある。
故人となった菊元虹雨(叔父・双子の兄)と菊元直也(父・弟)の句集をめくって月の俳句を抽出したが、俳句から肉声が聞こえるように思うのは、秋の夜長だったからかもしれない。
父がつけしわが名立子や月を仰ぐ  星野立子
虚子は2男6女の子福者だ。長男の年尾は「ホトトギス」を継承、その後も稲畑汀子→稲畑廣太郎と俳句界を牽引している。次男の池内友次郎は音楽家だが、
星野立子(次女)、高木晴子(5女)、上野章子(6女)は、それぞれ俳句の才能を発揮した。中でも、立子は、初の女性主宰誌「玉藻」を創刊・主宰し、同時期に活躍した女性俳人、中村汀女・橋本多佳子・三橋鷹女とともに四Tと称された。
   朴の葉の落ちをり朴の木はいづこ   立子
山本健吉は「朴の葉の」の句を評して、「ありふれた日常語の使用や、口語的な発想は、立子の句の一つの特徴をなすもので、虚子の句が持っている即興詩的側面を、立子は承けついでいると言えよう」と書いている。また、「彼女の句は、明るく、淡々として、軽く、また、のびのびとしていて、屈託がなく、素直な情感が盛られているのだが、その反面に、やはりあまりに他愛なくて物足りないという不満は、どうしようもないのだ。」とも評している。
大仏の冬日は山に移りけり      立子
大仏は鎌倉大仏だろう。温かい大仏に冬日の取り合わせが絶妙だ。「の」「は」「に」「けり」の使い方は、なめらかで、冬日まで流れていくような調べだ。
しんしんと寒さがたのし歩みゆく   立子 
天真爛漫なのか、強がりなのか。”寒さを楽し!”と言うのは、どうせ逃れられない寒さを逆手に取って、楽しんでしまえ!というしたたかさではないだろうか。人生の艱難辛苦?を乗り切るには、能天気と言われようとも目出度く、寿ぐ言葉で自分奮い立たすのだ。立子の俳句が愛されるのはこのためかと思う。
話は変わるが、岡山県文化連盟では、20ページもある写真入りの立派な冊子・総合プログラムを配布している。それは「第一五回おかやま県民文化祭」(9月~12月)の”アート、音楽、文芸などの様々なジャンルの発表/大会などのスケジュール”で「県民みんなが自己ベスト! 多様性と調和! 未来への継承!」がうたい文句だ。
俳句部門は、県レベルの「第22回岡山県現代俳人大会(15日・きらめきプラザ)」「第38回岡山県俳人協会俳句大会(22日・国際交流センター)」がある。
浅口市でも14日に「第十二回浅口市俳句大会」が開催された。浅口市は、三町が合併してできたので、大会は「鴨方」「寄島」「金光」の会場で、順番に廻るが、今回は金光の公民館なので、近くの金光教本部や門前町大谷を吟行し大会にのぞんだ。
この大会は、地方ならではの温かい会で、俳句経験者の市長や、俳句に造詣の深い教育長も必ず出席され、表彰状を手渡ししてもらえる。こんなにも俳句が地元にとけ込んでいるのはなかなか無いと思う。
30年近く、毎月発行の「遥照」(通巻333号)主宰、佐藤宗生先生の長年の取り組みのおかげである。
浅口の協会の会員と「遥照」の会員が選をした事前応募句の結果の三賞のみ紹介する。(約300句より)
  浅口市長賞
 咲きたくて散りたくて萩揺れており 南みどり
  浅口市教育長賞
 呆けてもいいではないか鰯雲    花房柊林
  文化連盟会長賞
 車椅子たびたび止まり秋拾う  光岡早苗
学生部門では、小・中学生に、夏休みの課題として、俳句が定着しておりブームの先駆けとして自慢できる。さて、予選通過した、約450句より選ばれたのは、
〈小学生の部・市長賞〉
色づくとてれてるみたいもみじのは  山本真央
夏がきた背伸びしている温度計   石田舜太
 じいちゃんのずしりと重いすいかかな 山下絢加
〈中学生の部・市長賞〉
グランドは私を焦がすトースター 中江美順
夏休みの宿題だから、仕方なしに作った俳句だとしても、自分探しができ、成長できたのではないだろうか。とにかく、五七五と指を折って呟けば名句の誕生だ。
表彰のあとは、当日句の互選が行われた。
今回は京都から「運河」同人・「鳳」主宰・浅井陽子さん、高松から若手俳人(新人賞を総なめ)の涼野海音さんも参加して賑わった。お二人は総合俳誌の「俳句」「俳壇」「俳句界」「俳句四季」など紙面を飾る有名俳人である。
大会賞には木の実の句が選ばれた。
   坐りたき石あり木の実打てばなほ 浅井陽子
   山々は高さ競はず雁渡し     涼野海音
さすがに大賞の句には、詩情が、物語がある。句跨りのリズムも新鮮だ。「坐りたき石あり」の切れに、「木の実打てばなほ」が畳みかける。「打てば」という音も、自然界からの便りに思えて、文句無しに好きな句だ。
私は、海音さんの雁渡しの句を特選に頂いた。「雁渡し」は、初秋に吹く北風(青北)のことだ。「雁渡る」と間違えそうだが、鳥をさすのではない。季語のかりがね、初雁、雁が音、雁の棹などは雁のことだ。
この句の「高さ競はず」の中7の山々は何処だろう。あえて深読みすれば、人生の山かもしれないと・・。さわやかな句柄は、魅力的だ。
さあ、山から里へ来る鳥も、北から来る鳥、南へ去る鳥もいて、秋は大賑わいだ。渡り鳥は秋の日本へ渡来し越冬するのだが、おびただしい鳥の群で来る。「鳥渡る」は秋、「鳥帰る」は春の季語だ。
塊がやがてたひらに鳥渡る   浅井陽子
色鳥やきらきらと降る山の雨  草間時彦
燕はやかへりて山河音もなし  加藤楸邨
鳥渡るこきこきこきと罐切れば 秋元不死男
 オノマトペで有名な句だ。拘留の経験のある作者にとって、こきこきと罐を切る時、金属の鈍い音が耳に残る。ぎざぎざに開いた罐の蓋・・「鳥渡る」は空への自由への思いだろうか。
        やんぬるかな!

Posted on 2017/10/30 Mon. 08:04 [edit]

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やんぬるかな69 

やんぬるかな69  子供俳句
前回は、金子敦さんの五つの句集「猫」「砂糖壺」「冬夕焼」「乗船券」「音譜」を紹介した。さすが、カラオケ名人!絶対音感のある句集だ。
月を見るひとりは猫を見てをりぬ   金子敦
つぶあん派こしあん派ゐて月を待つ   〃

スイーツ王子らしい、好みも句になる。ちなみに王子はこしあん派だそうだ。
カネコさんと言うとネコ!月よりも猫が主役だ。
猫の尾のしなやかに月打ちにけり 金子 敦
秋の影ときをり猫の尾が動き   檜尾とき魚
 さて、「月」は秋の季語である。大気が澄み切って一番きれいに見えるからだ。月は地球をめぐる衛星で、27・3日で地球を一周し、太陽と地球の相対的な位置関係で満ち欠けをする。新月の月齢は0・0、満月はほぼ14・8である。
【月】新月・繊月・二日月・三日月・上弦の月・十日夜月・ 十三夜月・ 小望月・満月・ 十六夜・ 立待月・居待月・ 寝待月・臥待月・更待月・下弦の月・有明月・三十日月・・・
  月天心貧しき町を通りけり     蕪村
  こんなよい月を一人で見て寝る   尾崎放哉
  月光のつきぬけてくる樹の匂い   桂信子
  土笛を吹いて風土記の月迎ふ    菊元直也

【十五夜】旧暦八月十五日の満月の夜、良夜といい、秋の月の中でも特に美しい。名月、今日の月
  けふの月長いすすきを活けにけり  阿波野青畝
  迷ひ来し猫を良夜にかへしけり   菊元虹雨

【無月】名月が雲におおわれて見えない、雨だと雨月
  草踏んで獣通りし無月かな     廣瀬直人
【十六夜】旧暦八月一六日の夜、または月のこと
  十六夜湖のかぎりをさざなみす   野沢節子
  十六夜の出先へかかる電話かな  鈴木真砂女

【十三夜】旧暦九月十三日の夜で、名月の一か月後なので、後の月と言う。栗名月、豆名月とも呼ばれる
  くくくくと鳥昇りゆく後の月     石寒太
  
秋はまた文化の月、10月には、第15回岡山県民文化祭の地域フェスティバル「あさくち文化祭」が、開かれる。
浅口市は、平成18年、金光町、鴨方町、寄島町が合併して誕生した。「キラリと光る未来そうぞうワクワク都市」を目指している。市の木が「桜」、魚は「牡蠣(かき)」、星は「シリウス」とは、最近知った。浅口市健康福祉センターの多目的ホールの名前が「シリウス」なので、不思議に思っていたが、全天の中でも一番明るい「シリウス」を名乗るのは、この町が、天文台の町だから当然ではあった。
余談だが、俳句では、山口誓子が西東三鬼・橋本多佳子らと創刊した「天狼」はシリウスのことだ。
  墳山(つかやま)の天狼父にまぎれなし   角川春樹
 合併して出来た市だから、文化祭の会場も鴨方、金光、寄島に分散される。【浅口市総合文化祭―文化がまちに出る!地域いきいきプロジェクトin浅口―】
今年度の浅口市俳句大会は、14日に、他に先駆けて金光の会場で開催される。展示は書道、絵画、水墨画、陶芸、生け花、写真などの傑作、力作が3つの会場で21日から発表される。バラバラの会場を巡ってもらう為なのか、子供のスタンプラリーが目玉企画だ。“才能発見の旅に出よう!”の掛け声で「こども体験コーナー」を設け、参加賞の図書カードは、2つ以上の会場で、2つ以上のスタンプを集め、アンケート2問に答えるとゲットできる。
我ら「遥照」でも、21日(鴨方)、28日(寄島)で、コーナーを開設するので、是非遊びに来て欲しい。
いざ「俳句」を説明するとなると、なかなか難しい。
【ルールは「五・七・五」の十七音で「季語」が一つ入っている。】だが、季語は旧暦なので、馴染みにくい。とりあえず「歳時記」の中から、分野別に分りやすくピックアップする必要があろう。
今回、ネットで富山大学付属小学校教諭・前田正秀さんの記事「小学生の俳句がおもしろい!」を見つけたので、少し紹介したい。
俳句の魅力、俳句の指導などの項目も為になるが、“リズムを味わう”“俳句を音読する!”ことの指摘がなかなか新しいと思ったので、見てみよう。     
【俳句には、自然に体でリズムを感じたくなる心地よいリズムがあるのである。俳句の七五調のリズムを、音楽でいう「8(エイト)ビート」だと捉え、体感する。】

 【例えば、「古池や蛙飛び込む水の音」 を音読する。大抵の人は「古池や」と言った後、無意識のうちに3泊の休符を入れるのではないだろうか。
 5文字と3拍の休符で、合わせて8ビート。この8ビートのリズムが、日本人にぴったり合うのである。だから、私は子供に指導する際、多少の字余りや字足らずにこだわらない。】
「分かる」のと「できる」のは違う。「自分だけの発見」のある俳句をと、試行錯誤して、穴埋め問題で遊ぶ時間を設けたそうだ。
    そこで問題Q
(     )くるりとパーマをかけている
( )の中に言葉を入れてみる。
「お父さん」「お母さん」と入れるようでは30点。
当たり前でつまらない。ライオンが などと動物を入れるようなら80点。ちなみに、この俳句は、全国学生俳句大会の入賞作品で、( )の中に入っていた言葉は、「ブロッコリー」である。クラスで出てきた傑作の答えは、「わらびがね」だったそうだ。
   さて、次の問題Q  子供の感性に脱帽する答は・・・(後ろ)
①雪だるま(     )をつけてお友だち
②秋の夜(     ) 笛をふく
③夏休み たいくつそうな(     ) 
④先生になりたがる(     )夏休み
⑤かしわもち 弟三つ 姉(     )
正解例①名前②しょうじの穴③ランドセル④母⑤一つ
 そこで、前田先生の真似をして、秋の果物の名句クイズを作ってみた。イ~ホより選択
①(  )くへば鐘が鳴るなり法隆寺  正岡子規
②星空へ店より(  )あふれをり   橋本多佳子
③(  )食ふ一語一語の如くにて   中村草田男
④海に会えばたちまち青き( )剥きたり 金子兜太
⑤父といふしづけさにゐて( )割る  上田五千石
  イ梨 ロ胡桃 ハ林檎 ニ柿 ホ葡萄  
 
  父がつけしわが名立子や月を仰ぐ  星野立子
  たのしさや草の錦といふ言葉    〃
  子の摘める秋七草の茎短か     〃
   
 星野立子は、高濱虚子の次女、初の女性主宰誌「玉藻」を創刊・ 主宰した。自由な発想が魅力だ。
子供の心で柔軟に俳句を楽しみたいものだ。
                やんぬるかな!

 

Posted on 2017/09/21 Thu. 09:46 [edit]

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