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空海が行く

俳句 猫 庭 のこと

やんぬるかな76 

やんぬるかな76  
前回は、俳人協会賞受賞作品「カムイ」の中の句をいくつか紹介した。
さまよへる湖に似てビヤホール   櫂未知子
南風吹くカレーライスに海と陸    〃

さまよへる!の句は、都会のサラリーマンの行き場のない習性や乾きを詠んだのであろうか?ビアホールに例えた湖は、海からとても遠い。
もう一つの句、カレーライスに海があるが、単純明快ではない。「南吹く」は、ぎらぎらの太陽の照りつけるビーチ、陸と海のぶつかる処を想像させる。はルーが海で、ご飯は陸?櫂さんの発想は、そんな単純なものではあるまい。陸と海の関係性は、地球の在り様、男女関係にまで、深読みできてしまうからだ。一枚の皿の上の出来事を、さらりと言ってのける遊び心にやられてしまった。
ところで、子供のころには、ライスカレーと呼んでいた記憶がある。たしか“カレーライス”は、アラジンのランプの様なポットで出されてご馳走だったし、ご飯に直接かかっていればライスカレーと思った。
聞くところによると、陸軍と海軍で呼び名が違っていて“カレーライス”が海軍式なのだそうだ。東京オリンピックの頃から、カレーライスの呼び名が優勢となったらしい。
これが別れのライスカレーです 山頭火
山頭火が食べれば、ライスカレーも俳句になる。

いずれにせよ櫂さんの俳句は、茨木和生先生の評にある様に、新しい領域を拓こうとする意欲に満ちている。凡人に出来ることは、普通の暮し、普段着の暮し、それなりの領域を見つけていきたいものだ。朝昼晩、春夏秋冬の食べ物から、糸口を探っていきたい。
朝日新聞出版の「旬の菜時記」「おいしい俳句をめしあがれ」がある。先ずは、タイトルが「歳時記」ではなく、「菜時記」である点に留意して味わうことにしよう。筆者は、おなじみの食いしん坊の宇多喜代子・大石悦子・茨木和生先生のトリオだ!
見開きは、「『旬の食材を、どう食べるのがおいしいか?名句とレシピで完全解説―』食通で知られる関西の俳人たちが、俳句と料理で季節を彩ります。レシピは伝統和食から洋食まで多彩。日本人ならではの感性と知恵がつまった一冊です。」
三人の先生方は、各地の俳句大会の選者をされているので、何度かお目にかかっているが、たしかに食いしん坊で、お元気である。
この「本」からは、俳句も料理も上手くなる秘訣が発見できそうだ。食べ物の起源、産地や調理法、また句の背景も興味深い。 (評は一部のみの紹介)
【春】傍線は季語
水菜採る畦の十字に朝日満ち  飯田龍太
 畦の十字は田畑の仕切りです。朝、美しく仕切られた畑の野菜はみずみずしさに満ちています。今日という日の始まりに畑の水菜を採り、その日のお菜にする。都会で土と遠く暮らしている人には夢のような贅沢です。       (宇多喜代子)
壺焼やいの一番の隅の客    石田波郷
 掲句は俳人鈴木真砂女の経営する銀座の小料理屋「卯波」で詠まれたもの。・・・昭和三十年代、病状が比較的安定してた波郷はよく卯波を訪れました。店に入ってすぐのカウンターの隅の席がお気に入りで、いつからとはなくそこは「波郷の席」と呼ばれるようになりました。(2008年卯波閉店)  (大石悦子)
何事も速し蕨を摘むことも   森井美知代
小鳥のさえずりを聞きながら山道を歩いていて、枯れ蕨の茎や葉の崩れている”ほどろ”を見つけると、目は蕨を探しています・・目を先に先にと送って蕨を摘むものですから、わたしは誰よりも早く蕨の一束を作っています。この句は私をモデルにしたもの・・
〈背広来てワンピース来て蕨摘む  和生〉  (茨木和生)
【夏】
 がてんゆく暑さとなりぬきうりもみ 久保田万太郎
きゅうりは胡(西域)から伝来した瓜であることから「胡瓜」と書き、熟れると黄色になるゆえに黄瓜と呼ぶのだとのこと。・・もともと胡瓜は夏を代表する果菜。・・胡瓜の魅力は、さっぱりした旬のみずみずしさと、暑さを忘れさせる歯ごたえのよさでしょう。(宇多喜代子)
老い進む湯攻めの鱧の縮む間も 後藤綾子
鱧はお造りから天ぷらまでどのように調理してもおいしいものですが、まずは湯引き。湯に落し入れるので鱧落としとも言われ、手早く氷水で冷やしたふっくらした一切れをいただくと、よくぞ「鱧」という字をあてたものだと感心します。鱧の身が熱湯をくぐって縮み、切口が反って白い花が咲いたようになるその短い間でさえ、容赦なく人は老いてゆく。・・戯画化してみせたところに、作者の達観に触れる思いがします。  (大石悦子)
七彩に銀の鰹が輝けり   山口誓子
 鰹が黒潮に乗って沖にやってくると、胸が高鳴ると紀州の漁師たちは言います。・・星をいただく夜明け前から、60キロほどの沖に出ていたケンケン漁の小型の鰹船が、糶の時間に合わせて漁港に戻ってきます。ケンケンとは、紀州の漁師がハワイのカナカ族に学んだ漁法の一つ。船の艫(とも)から潜航板を付け、擬餌針を仕掛けた二本の竿を出して、沖をかけながら鰹を釣り上げてゆくのです。糶場に並べられた鰹の背は、光によって広重ブルーに見えます。・・誓子の句は「和具」と前書きがありますから、熊野灘の鰹でしょう。ケンケンの鰹と断って売っているものなら、新鮮さを生かして「銀づくり」と呼ぶ、腹の銀色の皮をひかないでつくった刺し身が一番です。   (茨木和生)
 「熊野、魂の系譜」の著者、運河の編集長の谷口氏に次の句がある。
  引退の漁師も参ずケンケン漁 谷口智行 
この漁が始まるころの漁師の昂りが伝わってくる。熊野の鰹を食べて初めて俳句の意味も共有できるのかもしれない。
 3月31日に、津山で第25回「西東三鬼賞」の受賞式に、茨木先生が、選者で来られるので、馳せ参じた。西東三鬼賞は、高額な賞金で知られている。
受賞者は、俳歴60年、八十八歳の廣さんだった!
永眠の前の睡眠天の川   廣 波青
茨木先生の選考所感には、「西東三鬼の出席した最後の天狼句会に私も出席していた。そのときの三鬼の出句を覚えている。
〈秋の暮大魚の骨を海が引く 三鬼〉
こんな句を詠みたいと思って来た。私の選句もこの句をよしとする視点からである。」
寺井谷子先生は、「俳句一句に書かれた、あるいは出現する世界は、否応なく『今』を含む。・・透明感を得るのは、『天の川』がもたらすものであろう。『虚無』への誘引ではなく、思惟へと導く魅力的な一句であった。」
 廣さんの受賞の言葉に、「漁夫として百日、印度洋上で、鮪を獲り、鮫を撲ち過酷な労働に耐えられたのも、今思えば俳句あっての事でした。」海の怖さを知る人の句と三鬼の句が重なった。
 さて田舎ならではの暮しを満喫しよう。今年の藪は順調なようだ。自分で掘れば俳句もできるはず。
竹の秋孟宗淡竹真竹の順   右城暮石
煮汁掛け続けて筍眼張煮る    〃
        やんぬるかな!
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Posted on 2018/04/16 Mon. 17:46 [edit]

category: やんぬるかな

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遥照4月号2018 

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一病は長寿のきざし桃の花    佐藤宗生
くれなひは晩節のいろ寒椿    花房柊林
花鋏春立つ音の弾みゐて     甲斐梶朗
ひと群の日向を啄む寒雀      石津淡紅
殻割れば灯点るごとき寒卵     中西八千代
花の空真二つにして飛行雲     牧明子
大試験終へ饒舌しきりなり      山崎靖子
目が可愛い恐いと幼な白子干    竹地恵美
天然と添書きのあり鰤の市      古川澄子
日溜りに顔寄せ合うて寒雀      森脇八重
下萌や土の匂いに鍬かろし      原房枝
鶯の声に答礼真似てみる       井上和子
雛壇の官女に似たる娘も二十歳   山下和子 
竹藪を過ぎて出遭へる初音かな   大室瀧子
探梅のはずが酒宴の客となる    森靖子
石投げる子供も居らず池凍る    土屋鋭喜
すれちがふ少年の息下萌ゆる    久戸瀬孝子
はらはらもどきどきもあり入学式   藤沢絹子
スカイツリー上るも予約春隣     石井弘子
三鬼忌や池一面の赤藻草      山下卓郎
早春の膨らみを抱く庭木かな   虫明有菜
春一番竹の奥より生まれくる    徳永保美
人あまた火の粉求むるお松明   南みどり
春隣風や雲にも春化粧       高橋あい子
護摩供養竜は天へと昇りをり    工藤泰子
  

Posted on 2018/04/06 Fri. 08:24 [edit]

category: 遙照

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06

みすず俳句大会 入選 

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Posted on 2018/04/02 Mon. 08:57 [edit]

category: 俳句

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02

やんぬるかな75 

やんぬるかな75  工藤泰子
  野遊びやあの子が欲しきあの子のみ 櫂未知子 
前回紹介した句だ。櫂さんと言うと、句会に季語の現物を持ち込み、熱血溢れる指導で定評がある。
今年度の第57回俳人協会賞には、その櫂未知子さんと須賀一惠さんの二人が選ばれた。対象句集206編・予選通過43編からで、6年ぶりの二人受賞だそうだ。協会賞選考経過の中で、寺島ただし氏は、次のように語っている。
『銀座の歩幅』須賀一惠
大正十五年生まれの作者で、キャリアが長く語彙も豊富である。〈驚きのさまに四肢張り鵙の贄〉など生き物に心を通わせた句に優れた作品が見られる。「湖」を「うみ」と読ませるのは気になる。
『カムイ』櫂未知子
〈鉄道は永久に通らず在祭〉など故郷の北海道の風土が心に宿っている句や、〈一瞬にしてみな遺品雲の峰〉など、母の死の直後に大震災が起きてしまったときの句、さらに暮らしの中に俳味を見つけた句に個性的な新しさがある。・・知的操作の過ぎる場合があり、〈石炭と雪が出合へば素敵だろう〉はよく解らない。
選考委員(茨木和生・柏原眠雨・棚山波朗・山本洋子氏)は、(2句集を推す・季語を大事に・世代の魅力・写実と独創性)と題し感想を語っている。
茨木和生氏は、「受賞作『銀座の歩幅』は、91歳最高齢「晩年という未知の花野に遊んで」と明るい句集、『カムイ』は、新しい領域を拓こうとする意欲に満ちていた。」と言う。
今回、須賀さんの「長寿のご褒美」という受賞の言葉の中に、「私は生きている日々の心の流れをピンで止めるような句作という営みに魅了されて、続けて参りました」「言葉は不意に恩寵のように訪れ、季語と結びつきます。それは風と砂の出合いが描く風紋さながらに一瞬の景を生み出します。俳句はこの景色に身を投じる憧憬から生まれるのでしょうか。」
「シジュフォスのように、見えない頂上に岩を押し上げるような気持ちでしたが・・」
この一文には、心底驚いた。俳句途上でも始めたばかりでも、卒寿の柔軟な生き方を学びたい。
 芳草やすこやかにいま老いざかり 須賀一惠
 まつすぐにセロリ匂へり決断す  〃
 
櫂未知子さんとは、平成25年にお目にかかっている。当時、櫂さんと同じ「銀化」同人の畑毅さん(県の常任幹事)の骨折りで、第34回岡山俳人協会のゲスト選者をして頂いたからだ。まさに結社「群青」(櫂・佐藤郁良―共同代表)の立ち上げの時だった。テレビや雑誌に引張り凧の今では到底考えられない。早速、岡山県俳人協会会報「烏城」66号を取り出してみた。講演は「ユニークな俳人達」で、埋もれかけた俳人①身動きとれぬ状態②その中で、どう生き、どう死んでいったか③一見自由な今の日本で、われわれは心の自由を得ているか。「陸封」と言うべき次の三人に注目し、その生涯と俳句に光を当てるものだった。
背信いくつ手袋の中爪ぬくもる  川口重美
立てぬ日は這うて部屋掃く菊日和 国弘賢治
峡の空せまきに馴れて星まつる 馬場移公子
 畑毅さんの記事には「俳句は私の子供たちです」の櫂未知子語録を挙げ、「審査員をした俳句甲子園で、櫂氏が高校生達に一生懸命拍手をしている後姿を見ていた。美しい季語の現物を集め、『群靑』を立ち上げ若い俳人を育てようと・・氏もまた、ユニークな俳人である」と、締めくくった。(紹介句から一部)
  男とか女を超えて日向ぼこ 櫂未知子( 貴族)
  佐渡ヶ島ほどに布団を離しけり 〃 (蒙古斑)

さて、その年の岡山県民文化祭賞、しかも櫂氏特撰に選ばれたのは、次の句であった。
 夕焼をゆく少年の背番号  広畑美千代
遥照関係者は、募集句の2句が秀逸に選ばれた。
 追い越せぬものを追ひかけ走馬灯 中西八千代
 逢えばもう許しておりぬソーダ水 久戸瀬孝子
当日句(清中蒼風特選)
  地に還る一葉のおもさ韻かせて  佐藤宗生
 懇親会では、密田顧問の開会挨拶、佐藤常任幹事の乾杯、俳人協会の「俳句の歌」大合唱などが、報告されている。講師を囲んだ写真も貴重な思い出だ。
毎年のように、ノーベル文学賞、直木賞、芥川賞が、マスコミで騒がれ、本屋の店頭に受賞本が積み上げられる。最近の俳句事情はテレビ番組のおかげで、少し様変わりしてきた。今年の新人賞の句を探ってみよう。
第41回俳人協会新人賞
『片白草』大西朋
  身支度のものの五分や桃の花
  片白草魚に声のなかりけり
『金魚玉』黒澤麻生子
  まだ固き教科書めくる桜かな
  金魚玉むかしのことは生き生きと
『蝶の家』白石渕路
  空を飛ぶ這ひ児人形つるし雛
  一片の落花に時の流れ出し
第32回俳人協会評論賞は、次の2作で、出色の論考だったそうだ。読むにはハードルが高そうだ。
『言葉となればもう古しー加藤楸邨論』今井聖
『虚子散文の世界へ』 本井英
さて、「俳句文学館」に掲載されていた「カムイ」の自選句(15句)から、いくつか紹介しよう。
 南風吹くカレーライスに海と陸
 簡単な体・簡単服の中
 さまよへる湖に似てビヤホール
 海流のぶつかる匂ひ帰り花 
 探梅やかばんを持たぬ者同士
 雪しろは月光の音立てにけり

視野の広さ、自在な発想が魅力的だ!
やんぬるかな!


Posted on 2018/03/28 Wed. 07:48 [edit]

category: やんぬるかな

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第32回岡山県現代俳句の書展 

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月の影踏んでおののく鬼の舞    佐藤宗生
独り夜の心音しかと寒の月      田中愛
菊日和ふんはりと結ふ祝ぎの帯   森脇八重
神の田の御裾分け待つ稲雀     柚木寿代
石橋も川面も包む花樗        森靖子

Posted on 2018/03/24 Sat. 10:04 [edit]

category: 俳句

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